04.君は幸福の象徴で
誰と比べているのか知らないが、偉大なるモテ男を同じ土俵で戦わせるのは心に傷を負うのでやめてほしい。
自分ではそれなりにもらったかなと思っていた5個のチョコレートに対して、えっ紙袋いらなかったのーと
残念そうな声を上げるのはやめてほしい。
たくさんもらえるって踏んでたから用意してなかったよと、実は今日の中でもっともショッキングな一言を
笑顔で言い放つのは一番やめてほしい。
あんた本当に何なんです。
剣城はもはや定型文と化したフレーズを口にすると、いつもと何ら変わらない食卓に就いた。
「言っときますけど5個って多い方ですよ」
「えっ、そうなの?
でも私の知り合いは自分の机いっぱいプラス近所の男の机いっぱいプラス靴箱で紙袋いくつだったかなあ、
相当もらってたよ毎年」
「その人がおかしいだけです。そもそも近所の席の連中がかわいそうすぎます」
「でも私があげたから喜んでたよ。私チョコは本命とパパくらいにしかあげないから」
「かわいそうな人が本命だったんですか? 知り合いの視線を考えるともっとかわいそうになりました」
「ううん本命は風丸くん。その子にはなんでだろ、うーん・・・。
あっ、絶対に誰からももらえないだろうってわかってて、超落ち込んでるとこでチョコあげて
私マジ天使だと崇めさせたかったからとか!」
最悪だ、この人はバレンタインの悪魔だ。
剣城はやっぱりチョコ欲しいと尋ねてくる悪魔に、実はこっそり用意していた様々な思いを込めた逆チョコを押しつけた。
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