05.鯨の背中
ラーミアが拗ねている。
どうやら誰かが至らぬことを言ったらしい。
ライムは『誰か』に何を言ったのと問い詰めると、『誰か』は夢を語っただけだよとしれっと答えた。
「空が飛べるんだからそれでいいでしょ。普通は空すら飛べないのに何言ってるの」
「ラーミアのおかげで俺たちは鳥になれた。だったら次は魚に乗って浮きたいって思うのが普通だろ」
「思わないわ。そもそも海の中なんてどうやって呼吸するのよ」
「ラーミアだってあんなに高いとこ飛んでんのに俺ら息苦しくないじゃん」
「それはラーミアが守ってくれてるからでしょ」
『リグは、ラーミアでは不満ですか・・・?』
「いやそんなのないしもちろんラーミアには感謝してるけどさ、それとこれとは話が別っていうか」
人の欲は尽きることを知らない。
1つの夢が叶えられればまた別の夢を追い求める欲深き生き物だ。
勇者とて人間で、欲にまみれている。
それでも背に乗せることができるのは、リグが真実を語る心正しき人物だからだ。
いいことも悪いこともすべて口に出してしまうリグは、神の鳥と付き合うという点においては大いに得をしている。
リグはあっと声を上げると、ライムを浜辺に連れて行きほらあれと海上に浮かぶ魔物を指差した。
「ラーミアに懐かれてるんだからキングマーマン懐かせるくらいどうってことないって!
頼むライム、駄目もとでいいからやってみてくれ!」
「馬鹿なこと言わないの!」
「あー・・・、リグ頼む相手間違えてるなー・・・」
「バース?」
「なんでもなーい」
そもそもキングマーマンの背中なんて固くて刺々しすぎて乗れないだろ。
バースはキングマーマンに素手で触れようとして火傷したリグを見やり、深くため息をついた。
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