03.煙るような
ネクロゴンド神官団は聖職者のようだが、伴侶を持つことを禁じられていない。
優れた才能を有する血は絶やすことなく後世に遺していくことを是とされた神官団員には、
連日国中の娘たちから熱い愛の手紙が届く。
冗談もろくに言えずただただ厳しいだけの諸先輩方のどこがいいのかまったくわからないが、
わからないのはこちらがまだまだ子供だからだと周囲は言う。
それにしても、特別人気者になりたいという願望はないが一通くらいネクロゴンド神官団最年少団員
エルファーランのことも気にかけてはくれないだろうか。
エルファは団員室のそれぞれの机の上に山積みに置かれた手紙が自身の机の上には一通としてないことを確認すると、
ほうと小さくため息をついた。
仕事に打ち込めるのはありがたいが、ほんの少し、本当に少しだけ空しくなる。
「あ、エルファいた」
「バース?」
「ったく、みんな手紙くらい自分で渡せばいいのに意気地がないこった」
「仕方ないよ、遠方に住んでる人だっているんだから」
「俺はすごく遠いとこに住んでるけどはい、やっぱりこういうのは直接本人に渡さないと想いは伝わんないよ」
「・・・いいの?」
「もちろん!」
エルファに渡す権利があるのは世界中でただ一人、賢者バース様だけだ。
バースは事前に回収し野焼の火種として有効利用したエルファ宛ての山ほどの手紙を思い出し、うっそりと笑った。
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