05.花に降る睦言
花が咲いた。
当たり前のことではなく、とても大きな出来事だった。
精霊が創り出したこの台地には未だ色が乏しい。
緑あふれる豊かな大地になるにはまだもうしばらくかかると聞いていただけに、見つけた花の存在は大きい。
マイラヴェルは一輪ぽつりと寂しげに咲き揺れる名もなき花を眺めると、ようやく一歩だと呟いた。
「しかし、この花から緑は広がっていくのだろうな・・・」
「マイラヴェル、どうしたのですか」
「ルビスよ、花が咲きましたよ」
「まあ・・・。綺麗ですね、大地に力強く根を張る花は」
「やがては大地のすべてが緑に包まれるでしょう。ここはルビス、あなたの大地だから」
「きっとさぞや美しいのでしょうね。人々が豊かに暮らしていける、温かなアレフガルドは」
「我々は皆あなたを信じ、生きている。
我ら人間の力は微力なれど、あなたの作りたもうた恵みの大地に必ずや繁栄をもたらしましょう」
そしてその暁には、あなたには腕いっぱいの花を贈りましょう。
そう言って淡く微笑んだマイラヴェルに、ルビスはええと小さくはにかみながら答えた。
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