08.真っ暗な部屋で
どきどきする。
普段は明るい場所でしか会わないので、突然暗い場所でぴたりとくっついていられると気が気でない。
暗いからといってやましいことをするわけでもないのに、心のどこかではそうはならないだろうかと不安になり
自制を求めようとしている自身に腹も立つ。
薄暗い部屋の中でぼんやりと見える横顔も綺麗だ。
どこで見ても綺麗なのだが、雰囲気が違うせいかいつもよりも大人っぽく見える。
そう見えてしまうのも、潜在的につまりはそういうことをしたいと思っているがゆえだろうか。
いいやここは場を読め、空気を読め、相手の心中を読むんだ。
お前なら読めるはずだ、なぜならお前つまり俺こそは、女神に認められたゲームメーカーだからだ・・・!」
「鬼道くん」
「あ、ああ!?」
「本編始まるし他のお客さんの邪魔にもなるから、そろそろぶつぶつ呟くのやめてもらっていい?」
「あ、ああ大丈夫だ! すまない!」
「だったらいいけど・・・」
この映画のイケメン俳優の台詞一言一句聞き漏らさない勢いで来たんだから静かにしてよねと、
もはやスクリーンの中のイケメンしか見えていない恋人に念を押された鬼道は、項垂れながらもう一度小さな声で
すまないと答えた。
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