09.救いなど求めていません
最悪だ。
失くしてはいけない大切なもらい物だから肌身離さず持っていたのに、気が付けば頭からなくなっていた。
いつ失くしたのだろうか。
自宅にはない、教室にもない。
ほんの少しだけ生徒会長の力を借りて校内中を探させたが、排水溝に流れる水をすべて抜いても見つからない。
いったいどうすればよいのだろうか。
闇雲に探す前にもう一度自身の行動を顧みる。
いつものように授業を受け下校し、その後あまり好きではない知り合いに返すものがあったので陽虎学園へ向かおうとした。
向かおうとしただけで実際に校門を潜らなかったのは、かの学園が非常に風紀の乱れた学校だと聞いたことを思い出したからだ。
風紀乱れたる学校を訪ねることは怖くないが、自分の身勝手な行動が学校同士の問題になることもない話ではないので迂闊に動けない。
以前大徳工業バイク部の部員に泥をかけられたことが抗争に発展しかけたことは記憶に新しい。
「・・・行かねばならぬ時もありましょう・・・」
考えられる落とし物コースは残りひとつしかない。
猛獣の道と呼ばれる道を探すしかない。
何が出るかわからない道へと踏み出した途端、どこからともなく獲物を捕食しようとする獣たちの視線を感じるのは
気のせいではあるまい。
下を見ながら歩くとすぐにでも襲われかねない。
危険を覚悟で俯き加減に歩き始めた自身に、わらわらと陽虎学園の生徒たちが群がってくる。
すわ戦闘か。
「へえ、こんなとこに鳳凰学園の子なんて変わったお客さんもいるもんだねえ」
こいつが獣の王か。
そう思い声の主を見上げると、王(仮)はにいと口角を上げた。
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