05.衝動だけじゃ動けない
どんと背中を押すが、前にめりに倒れるだけで起き上がることはない。
起きろよと声をかけても、何かを訴えるような目で見返されるだけで口を開きもしない。
だらくさな奴だな。
リグの情け容赦のない罵詈雑言にバースは絶望のどん底に叩き落とされたような悲しげな表情を浮かべようとして、
顔がぴくりと引きつった。
「アレフガルドでは名高い賢者も無様だな」
「・・・! ・・・!」
「口もきけないほど故郷の魔物に怯えたのか?」
「!! ・・・! ・・・!!」
「リグ、違うよって言ってるよ」
「でも喋んないだろ。さーてどうするバース、この満月草口に突っ込まれて窒息死するか、エルファにキアリクを乞うか」
「・・・・・・・!! ・・・っ!」
「だよなあ、エルファに魔力使わせるの申し訳ないもんなあ。じゃあいったん窒息コースでほら食え!」
「だー! 違うって、人に何やろうとしてんだこの勇者!」
時間が経ち痺れが取れたのか、バースががばりと起き上がり猛然と抗議する。
リグはわかるように大きく舌打ちすると、丸々と太った満月草を嫌々袋に仕舞い直した。
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