07.隠し切れない本音
珍しいこともあるものだ。
凌統は普段は目の上のたんこぶのごとく容赦なく扱き使っている遠縁(らしい)の娘の擁護を始めた陸遜を見やり、ゆるりと首を捻った。
殿がかわいそうですと言われても、かわいそうなことをした覚えが戦場以来やった記憶がない。
むしろ、こちらの方がいつも自発的に我慢して待てをしてかわいそうな目に遭っている気がする。
「そもそもが無理があったのでは? 凌統殿は殿のような方が好みではなかったでしょう」
「俺はだから好きになったんだけど」
「それはわからないようでわかりますが、やはり凌統殿は殿のようなややこしい性格をした凌統殿好みの女性を
選ぶべきだったと思います」
「軍師さん、何が言いたいわけ?」
困惑した表情を浮かべた陸遜が、これまた珍しくも甘寧に救援を求める。
甘寧は更に珍しくも神妙な顔つきになると、うんうんと大きく頷いた。
陸遜ならまだしも、甘寧ごときに見下されるとは癪に障る。
凌統は鋭い視線で甘寧を見据えた。
「お前はふらふらちらちら他の女に目が移りすぎなんだよ。それも見てる女見てる女公主さんとは違う感じの、お前好みの肉づきのいい」
「・・・いや、それは」
「あるんだよ。公主さんああいう性格だから何も言わねえんだろうけど、やっぱ女なんだし傷ついてんじゃねぇの?」
それに公主さん、言うほど貧相でもないしな!
盃を一気に煽りからからと笑った甘寧に、一気に酔いが醒めた凌統が飛びかかった。
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