08.世界の今後より大切なひとがいるんだ
ねえライムと穏やかな口調で尋ねられ、声の主を顧みる。
赤々と見える焚火を眺めていたガライが、膝を抱え炎へ視線を向けたままもう一度ねえライムと声を上げる。
ライムはどうしたのと返事を変えると、焚火に新たに薪をくべた。
「ライムはどうして異世界からはるばるここまで来たの?」
「ここに来て魔王を倒さなければ、私たちの世界に平和は訪れないからよ」
「でも魔王を倒すのはライムじゃなくてもいいんじゃない? 仲間とはぐれてもまだ、その夢叶えたい?」
「確かに私じゃなくてもいいかもしれないけどでも、やっぱり倒したいじゃない」
僕は世界平和は望んでないけどなあ。
ガライの一言に、ライムは思わず手を止めガライを凝視した。
ゾーマの支配下に置かれている現状に慣れてしまった諦念からの言葉なのかもしれないが、それにしても夢がない。
ライムは苦笑いを浮かべると、じゃあ何が夢なのとガライに尋ね返した。
「僕の夢はありきたりだよ。いついつまでも愛する人と一緒にいたい。
一緒にいられるんなら、そこが地獄でも構わないよ」
「でも、どうせ一緒にいるなら天国にいたくない?」
「天国から地獄に伸びる神の気まぐれは、1人しか救えないんだ」
2人じゃなくちゃ、天国も僕にとっては地獄以上の地獄だよ。
ガライの吟遊詩人らしからぬ夢のない冷ややかな言葉に、焚火がふるりと震えた。
元に戻る