お題・1
01.会える日をずっとずっと待っていた



 上手く思い出せないほんの少し前に、今日と同じことがあった気がする。
思い出したくてもまるで記憶そのものに蓋をされているように思い出すことを許されない思い出の中に、
確かに彼はいた気がする。
いや、可能性ではない。
これはもはや確信だ。
アリシアは腕に抱かれたまま降り立った冷ややかな空間で、ゆっくりと目を開けた。
目に飛び込んできたのは闇でも輝く美しい銀の髪。
腰に回されている腕は少し震えていて、彼が緊張しているのがわかる。
青年は視線に気付いたのか、ぱっと体を離すと調子はと短く尋ねた。



「さぞや不快だったとは思う。すべては私と係わったせいだ」

「そうかもしれないけど、生憎と私はなぜあなたのせいなのかわからないの」

「それも私のせいだ。君に起こった災難はすべて、私との係わりが原因だ」

「じゃあ私はこれからも、例えば今日の明日にでもまたこんな目に遭うの?」

「それは・・・」

「遭うんでしょ。あのね、あなたはそうやって全部自分のせいにしてしまえばそれでいいかもしれないけど、私はそうはいかないの。
 私は教えてほしいの。あなたが何者なのか、ちゃんと、今度は忘れてしまわないように」




 やっと会えたんだもの、もう逃がさない。
アリシアはそう言い切ると、青年の腕をぎゅうと掴んだ。





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