05.一口かじってみる?
不自由を強いられた生活は、おそらくこちらが思い描いているほどしていなかったと思う。
孫家の姫君ほどわかりやすくお転婆ではないが、彼女もまあ結構それなりに周囲の手を焼かせてきたと思う。
さすがは陸遜に負けず劣らずの火計家だ。
燃やせそうなものにはとりあえず火をつけていたのかもしれない。
「公績殿のお気持ちがよくわかりました」
「あ、いやこれはその、もちろん褒めてんだよ? は可愛いなあって
「公績殿の褒め言葉は私には難しゅうございます」
「の愛情表現ほどじゃないと思うけどね」
「・・・・・・甘寧殿、おひとついかがですか? 子分の方々にもぜひ」
「おっ、公主さん気ぃ利くじゃねーの」
「やめて、わかりやすく俺を無視するのやめて堪えるから」
肉まんがたくさん詰められた籠ごと甘寧に手渡そうとしているの手から、慌てて籠を奪い取る。
朝からせっせと作っていたお手製の肉まんをなぜ恋人を差し置いて甘寧などにくれてやるのか、さっぱり意図が読めない。
凌統は恋人の高尚な思考回路を読むことが今でも苦手だった。
「公績殿には別にご用意しておりますゆえ、こちらは甘寧殿にと・・・」
「へ、そうなんだ?」
「ええ。ですがようございました、公績殿はやはりお腹を空かせておいでだったのですね」
うん、そうじゃないんだけど、この件はもういいや。
凌統は甘寧に籠を返すと、肉まんではなくしゅうまいを受け取った。
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