06.小さな星がぽろぽろ落ちる夜のこと
遠くで戦があったようです。
間諜から聞いたわけでも軍議に出ていたわけでもないのに、この娘は意外と耳が早い。
軍師の下にいるからには武勇だけではなく頭も良くなければならない。
いつだったかそう訓辞を垂れたが、彼女が自分の指示をすんなり聞くわけはない。
それでももしやと思ってしまうのは、彼女に少しでも良い印象を持たれたいがゆえの淡すぎる期待だろう。
「あんたの情報源はいったいどこなんだか」
「星です」
「・・・あんたはいつから呪術師になったんだい?」
「昔、郭嘉様に教えていただきました。空には将星と呼ばれる将たちの星があり、それが落ちる時が死だと」
「はは、あの方らしい風流な」
「賈ク様のはあれです」
「ほう」
指差された先には青白く輝く星が煌めいている。
生憎こちらは星詠みをしないのでどの星も皆同じに見えるのだが、彼女には違いがわかるのだろう。
わかってくれているのが嬉しくなり、賈クは思わず口元を緩めた。
少しだけ気障だった先輩軍師に感謝した。
「今日も星が落ちなかったといつも安堵していました」
「そりゃ意外なことで」
「あなたを倒すのは私だと思って生きていましたので」
「・・・・・・」
でも今は違いますのでご安心ください。
そう淡々と口にする部下に、賈クは緩めていた顔を引き締めた。
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