10.きれいだからって
お前は染まらぬのだな。
そう何度言われ、髪を撫でられたことだろう。
憎まれた色のはずなのに愛おしげにさえ感じたのは、彼が見てくれではなくこちらの才能を愛でていたからだろう。
きっと本当は心だけでなく、見た目も暗く闇に染めたかったに違いない。
そうわかっていても、染める術を知っていても銀を宿し続けたのはプローズのささやかな抵抗だった。
「プローズよ、お前はいつ私のものとなるのだ」
「何を仰せでしょうか。私はとうの昔のゾーマ様、あなたに忠誠を誓ったしもべであったとお忘れですか」
「ルビスの愛し子プローズ・・・。お前の片割れも私の元に招きたいものよ。名は何と言ったかな」
「さて・・・。あのような凡庸な男の名など忘れました」
「ほう・・・。さすがは不世出の天才よ」
光を知る弟を、光を忌み嫌う下衆たちの前で語りたくはない。
プローズは柔らかく笑うと、ゾーマに深く頭を垂れた。
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