02.ぎこちない音を立てながら
わたくし、あまりに驚いてしまってこれからのことが不安でたまりません。
驚き悩むのは誰だって同じだ。
凌統は夜の陸遜邸で眉根を寄せ話す娘に、そりゃそうさと返し酒を煽った。
酒飲み仲間が増えることは甘寧あたりは単純に喜びそうだが、こちらとしては手放しでは喜べない。
何せ、あいつは一応恋敵だったのだ。
まったく相手にしていなかったし向こうもすぐに諦めたようだが、状況が変われば再戦もあるかもしれない。
それにちらと見ただけだが、こちらには遥かに劣るがあれもなかなか男前になっていた。
万が一、いや、億が一にでも間違いがあっては困るどころの騒ぎではない。
軍師さん、どうすればいい?
凌統は困った時の軍師の知恵を拝借すべく、陸遜の盃に並々と酒を注いだ。
「まあ俺の絶対的優位は何があっても誰が来ても変わらないけど、一応念には念入れといた方が俺もも安心でしょう?」
「変わらないならこのままでいいでしょう。私は今忙しいのです」
「忙しいって、戦もないし最近は落ち着いてるでしょ。何に忙しいんだい、女の尻追いかけること?」
「凌統殿」
「ああごめん。でもやっぱ俺としちゃ何か手は打っておきたいんだよ」
「・・・言っておきますが凌統殿、私は今回の決定にはとても嬉しく思っています。
朱然殿、楽しみですね!」
相談する相手を間違えた。
凌統は陸遜の手から盃を奪うと、一気に自身の喉へと流し込んだ。
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