05.甘い甘い誘惑のことば
ねえ、悪戯して?
出会った時から常に思っていたが、親友は骨の髄まで馬鹿らしい。
普通人は成長するにつれ賢くなるが、さすがは女神と謳われる女だけはある。
人間離れしている彼女に、人の成長過程を押しつけるのは無理な話だった。
半田はぐらりとしなだれかかってきた親友に、あのさあと呆れた声を上げた。
「お前絡む相手と甘える相手間違ってんぞ。なーに親友にせがんでんだよ、やめろ」
「親友? もーんそんなんじゃないでしょー」
「あ?」
「今の半田はまさに間男、浮気相手。どーう、クラスチェンジした気分は」
「いいって言うと思ってんぐ」
昔からすぐに好きな人にまとわりつきじゃれ抱きつくスキンシップの激しい子だったが、
最近になって更に悪化したように見える。
好きでもなんでもない、恋愛感情なんて持ってくれなかった異性の親友にまでまとわりつくなんてこいつ相当いかれてる。
でも、やめろよと口で言っておきながらもその口を離すことができないこちらの方がきっと、
彼女の不具合に流され便乗していい思いをしている最悪野郎なんだろう。
「なあ・・・、いつまで俺間男やんの?」
「んー、嫌い?」
「そりゃもちろんやだよ、いい奴なんているもんか」
真ん中よりもどちらかの端にいて、誰に後ろ指指されるでもなく隣を歩いていられる方がよほど嬉しいに決まっている。
いったいいつになったら日なたを歩けるようになるのだろう。
半田の溜息が、もう1人の口に吸い込まれた。
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