07.何をしたって勝てっこない
どうしよう!と言われても、どうしようとしか答えようがない。
ちゃんと話聞いてるのと詰られても、訊いているから返事をしているとしか返しようがない。
聞いてないじゃんいじわるばっかり!
これのどこが聞いていないと言えるのだ。
豪炎寺はシャープペンシルを机に静かに置くと、帰れと冷ややかに言い放った。
「俺の邪魔をするな、今忙しいんだ」
「私だってこれから超忙しくなるの! 修也が宿題手伝ってくれるようになるその瞬間から!」
「いつもつるんでる友だちはどうした。あのなんとかって子と一緒にやればいいだろう」
「やぁよだってあの子恋バナしかしないもん私そういうの超苦手」
「じゃあ俺も恋バナすればいいのか? すれば出て行ってくれるのか?」
「えっ、修也恋バナネタあんの? ちょっと聞かせてよ」
「しない!」
何よう修也のけちーいじわるーとぶうぶう文句を垂れる幼なじみにうるさいと一喝し、再びペンを手に取る。
あれだけ宿題は7月のうちに終わらせると豪語していたのに、彼女は小学生の頃からそれを実践できた験しがない。
豪炎寺は強硬手段に出たのか、ぴたりと隣に寄り添いふんふん頷きながらノートに書き写し始めた馬鹿に暑いと非難の声を上げた。
「寄るな、勝手に見るな」
「クーラー効いてるから大丈夫、暑くない暑くない」
「広いリビングでどうしてぴったりくっつくんだ、邪魔だとわからないのか」
「いいじゃんそんなの。ほほほ近う寄れ近う寄れー」
「ヒートタックルするぞ」
「やぁん修也ってば情熱的ー」
そういう情熱的なとこ嫌いじゃないよー暑苦しいけどってほら、褒めたげたからお礼に宿題手伝う!
こちらが返事をする前にひょいと奪われた夏の宿題に、豪炎寺はひときわ大きな声で幼なじみを叱り飛ばした。
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