09.声を上げてしまいそう
親の言いつけを聞かない不肖の娘だった。
外は危険だとは言われなくてもわかっていて、それでも出たくなるのが人だと思っていた。
世界は魔王に侵されつつあるけれど、街の外にしか生えない薬草があるのだから外に出るしかない。
たとえ自分が非力な女でも、だ。
「ねえアリシア、やっぱり戻りましょうよ」
「あらどうして? あと少しで着くのに」
「なんだか今日の森は不気味だわ。魔物の鳴き声もしないなんて気味が悪い・・・」
「じゃあきっと今日は魔物がいないのよ。良かったじゃない、そっちの方が捗るわ」
「アリシア・・・!」
怖いもの知らずの変人アリシア。
周りからそう呼ばれていることも知っている。
私に付き合ってくれいているこの子もきっと、やっぱり私は変わってると思ったに違いない。
魔物を怖がらないっておかしなことなのだろうか。
勇気あることだと思わないのはなぜだろうか。
なぜ人は、いつから、人は魔物を恐れるようになってしまったのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、後ろからきゃあと甲高い悲鳴が聞こえた。
悲鳴と、おぞましい魔物の咆哮と、そして、今まで聞いたこともない何かの鳴き声。
連れの元へ走った私は見てしまった。
魔物を喰らう魔物を、生まれて初めて見てしまった。
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