お題・1
1.気持ちイイコト、しようよ



 脱衣所にさりげなく置かれている包みを開けて、ぴしりと固まる。
何だこれは。どこでこんなの手に入れた。
こんなの売ってる店が世界のどこかにあるというのか。
そもそも、これを私に渡して何をさせたいんだ。
布面積はやけに少ないし、黒地にレースとかほんと趣味に走ってる。
これ、胸元のリボン引っ張ったら簡単に前が開いてしまうじゃないか。
え、なに、うちの旦那様こういうアブナイ系の下着が好みだったの?
ていうか、一応は装備品なんだよね、ただの下着とかじゃなくて。
これを着た私をご所望だというのだろうか。
こういうの好きなのはククールだけかと思ってた。
そうか・・・、マイダーリンも健全な男でもって、むっつりスケベさんだったわけか。
そうかそうか、毒針がどこですか。





「あ、気付いてくれた? どうだろ、似合うと思うけどな」

「うん、可愛い下着だね」

「でしょ。今日はそれ着てよ、きっと燃えるよ」

「やだっていうか、この訳わかんない下着をメラミしていいってことなのかな?」





 えー違うよーと可愛く言ってるけど、その手に乗るわけにはいかない。
私にだって許容範囲はある。
いかにも襲って下さいって誘ってるような下着なんて着られない。
燃えるのは旦那様だけで、私はくたくたになるだけ。




「たまにはいつもと違う趣向でやってみようよ。新しい自分が見つかるかもしれないよ」

「私は、あなたがむっつりスケベさんだってよーくわかった」

「じゃあ僕も知らなくちゃ! そしたらおあいこだよ」





 さあさあ着なよ、何なら僕が着せたげるよと危険な言葉を連ね迫ってくる彼から後退する。
こんな下着本当に燃やしてやる。
私は片手に魔力を集中させた。




「メラ「マホトーン」



 愛しい妻にマホトーンだなんて酷すぎる。
そこまでして私にそれを着せたいの!?
下着と一緒に彼が視界に入ってくる。
あぁだめだ、逃げられない。




「ほら、大人しくこれ着て早く寝よう「私が丸腰だと思っちゃ嫌よ、天罰よ、舞い降りよ!」あぁっ!!」




 背中にたまたま当たった天罰の杖を振りかざす。
杖から巻き起こった風は旦那様の手から下着をもぎ取って、
そして、たまたま開いたままになっていた錬金釜の中へとそれを落としたのだった。





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