5.熱いのは好き?
「あなたも、馬超様みたいに正義がお好きなの?」
・・・あぁ、何度同じ問いかけをされただろうか。
あのやたらと熱くてうるさい兄上のおかげで、私まで変な見方されてる。
尋ねられる度にいいえ違いますと拒否を繰り返す私のことを、少しは考えてほしい。
私は熱血乙女じゃない。熱いのは我が兄馬超だけ。
馬一族総熱血漢とかいった妙な思い違いはなさらないでいただきたい。
「ほんと、今日で30回目なんですよ・・・。私、そんなに熱い女の子に見えますかね」
「いいや・・・。どちらかといえば涼しい風が吹いている感じだな。馬超殿の性格とは少し違うようだし」
「ですよね。もう、みんなして私のこと何だと思ってるんだろ・・・」
「熱い男は嫌いなのか?」
あ、ちょっと趙雲殿が不安そうな目でこっち見てる。
嫌いってわけじゃないけど、兄上くらいにまで暑苦しかったらうっとおしいと思うかも。
そんなの、今の趙雲殿とは全くの無縁なんだけど。
「私は趙雲殿だったら、暑苦しくても多少冷たくても大好き。だから、変なこと思わないで?」
「それを聞いて安心した。私とて、いつも冷静でいるわけではないゆえ」
「そうなんですか? ちょっと熱っぽい趙雲殿も見てみたいかも」
冗談めかして言ったら、急に趙雲殿の目つきが変わった。
じっと私を見つめてる。
どうしてだろう、ただ見つめられてるだけなのにすごくドキドキする。
「趙雲殿・・・?」
「私も、明るくても涼やかでも怒りっぽくても、どんな時でもあなたを愛しく思っています」
「え、え・・・!? やだ、いきなり何言ってるのこの人!」
「熱っぽくしてみたのだがどうだろう?」
「・・・も、もっとときめいちゃったじゃないですか、もう!」
涼しげな趙雲殿は大人っぽくて大好き。
でも、情熱的な趙雲殿も大好きみたいだ。
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