お題・7
7.無邪気にはにかむ確信犯



 私はスペインがコレクションしているとかいう秘蔵アルバムを見て愕然としていた。
秘蔵どころじゃない、今すぐこんなアルバム処分しなくては。
私はびっしりと貼られた自分の写真を引き剥がすべく、アルバムに手を伸ばした。
が、写真に触れる直前に、横から伸びてきたしなやかな腕に行動が阻まれる。




「邪魔しないでスペイン。私本当に嫌なのよ、こうやって無許可でバシャバシャ写真撮られるの」

「それでもあかん! せっかく可愛く撮れとるんやもん、捨てるなんてもったいないわ!」

「捨てないもん、燃やしてくれる」

「もっとあかん!」




 いくらスペインの頼みだろうと、こればっかりは聞くつもりはない。
私は力任せに写真を引き剥がした。
あまりに勢い良く剥がしたものだから、ページがめくれる。
とても人に見せられないようなものが出てきた。
嫌な予感がして次のページもめくる。
無言でアルバムを閉じて、隣でにやけた顔してるスペインを見つめた。
こいつ、何をしてるんだろうか。
この男の情熱はどこに傾けられてるんだろうか。
いいや、聞きたくもない。聞いた時にショックを受け傷つくのは私だ。




「大変やったんよ、これだけ集めるのに何百年もかかったわ」

「ねぇ、どうしてスペインとそれほど親交結んでない頃の明治時代の私の写真とか、あまつさえ全裸の私がいるんだろ」

「かあええもんはいつも傍に置いときたいやん。俺、いつも一緒にいたいんよ。わかる?」

「そんな可愛く言っても駄目。スペイン、気持ち悪い」




 何度だって言ってやる。
いつから集め始めたのか知らないし入手ルートも知らないけど、
盗撮しまくった写真見て盛大に悶えてるスペインは気持ち悪い以外の何者でもない。
フランスを越えたかもしれない。
このアルバムは私が早急に焼き払ってしまおう。
エコがどうたら二酸化炭素がどうとかとドイツが文句言うかもしれないが、
イタリアのあんな写真見たら燃やせと即答してくれるはず。
それほどまでに酷い。
あんなに純粋無垢なイタリア兄弟まで欲求回復の道具にしてるとは。




「なぁ、今度は写真やなくて生が楽しみたいんやけど。あとな、気持ち悪いとか悲しいこと言わんといてー」

「スペインの家のトマトなんて滅んでしまえ、このド変態が」




 スペインの家にはこのアルバムと似たようなのがあと数冊残っていることを、この時の私はまだ知らなかった。





元に戻る