02.暗闇に手招きされて
最近、理由もわからずよく意識を飛ばすことがあるらしい。
自宅にいたはずなのに気が付いたら森の中にいたり、ついこの間は随分と遠出をしていたようで、
未だ開通もしていない海底トンネルにいた。
リムルダールの近くの草原程度ならばよく出かけるが、さすがに山を越えた先へは恐ろしくて行けない。
興味はあるが、命が惜しいので行けない。
そうだというのに、知らないうちに山を越え対岸が見えそうになところまで来ていた。
気味が悪い。
我が身に何が起こっているのかという興味よりも、知らぬ間にまるで誰かに操られているかのように
勝手に動いている事実への恐怖の方が大きかった。
「長老様、私いったいどうしちゃったんでしょうか」
「うむ・・・・・・。・・・アリシアや、落ち着いてお聞き。
・・・お前は人ならざるものと係わりを持ってしまったようじゃ」
「人ならざるもの!? 私そんなの心当たりありません! 魔物には会いますけど、ちゃんと退治してくれてます!」
「魔物ではない。獣でもない。しかし、お主からは何かを感じる」
「何かって、だから私はそれを知りたく・・・あっ」
不意に頭の中が白く弾け、それきり何も考えられなくなる。
遠くで長老の焦った声が聞こえる気がしないでもないが、やはりそれも定かではない。
こやつが、賢者の、女か。
ようやく意識がはっきりとし覚醒したアリシアの眼前には、常世よりも深く暗い闇が広がっていた。
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