05.優しくて穏やかで少し哀しくて
やあと軽やかな声で呼び止められ、渋々振り返る。
女好きとは聞いているし見るだけでわかっていたが、まさか女らしさの欠片もないこちらにまで
手を伸ばしてくるとは思わなかった。
は拱手すると、すぐに男から背を向けた。
「、君は相変わらずつれない娘だね。そんなに私が苦手かな」
「いいえ」
「では殿から近付くなとでも言われた? あるいは夏侯将軍・・・かな?」
「いいえ」
「ではなぜ? 私としてはもっと君のことを知りたいのだけれどね。
私と君の仲じゃないか、私たち結構長く一緒にいるよ」
いつの間にか目の前に回り込んでいた郭嘉がにこりと笑い、小首を傾げる。
女よりも美しい肌、女よりも美しい顔、女よりも美しい所作。
女を磨こうとしたことのないこの身に郭嘉は眩しすぎた。
「郭嘉様、私に何か御用でも?」
「そうだね、ちょっとご機嫌伺いに、ね」
「では私はこれにて失礼します」
「待って、」
「・・・はい」
だからいったい、彼は何の用があるというのだ。
少し苛々しながら返事をすると、ふにと頬に柔らかな温もりが触れる。
いつも頑張っているに、ご褒美だよ。
そう言われ、はいよいよ逃げ出したくなった。
「冷めないうちに召し上がれ?」
「・・・郭嘉様! 人をからかうのもいい加減にして下さい!」
だから郭嘉は苦手なのだ、いつまでも子ども扱いするから。
は頬に押し当てられた肉まんにかじりつくと、郭嘉の楽しげな背中をむうと睨みつけた。
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