06.束縛したいだけでしょう



 少し歩いただけですぐに飛んでくる『いずこに参られるのか』という声。
何か言われたのか、次に返した言葉は『であれば、ここにいらして下され』。
見守る方も見守られる方も大変だ。
こちらが見守られることなどこれまでもこれからもないのでまるで他人事だが、
さすがにあそこまでしつこく言われると彼女でなくても反目したくなるだろう。
いやむしろ、あのお方はかなり辛抱強い姫のようだ。




「・・・おおか。・・・見たのか」

「ええ。姫君の護衛とはもっと退屈なものだと思っていたのですが、張遼殿を見て考えを改めていたところです」

「あの方が特別なのだ。何にでもすぐに興味を示され、心赴くままにいずこかへ動こうとされる」

「・・・楽しそうですね」

「冗談を言うな。非常に気を揉む任務だ」

「でもご自分で志願なさったと聞きました」

「そうせねば後悔すると思ったがゆえだ」」




 誰が何に後悔するのかはわからない。
しかし少なくとも、聞いてしまったこちらが現状もっとも後悔しているような気がする。
集中しよう、今なすべき任務はホウ統の監視だ。
はひらひらと揺れ動く張遼の鎧飾りから目を逸らすと、剣を構えた。




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