お題・7
07.繋がりを断ち切ってどこへ行こうか



 森から抜けるといつの間にか姿を消していた彼に会いたくてたまらない。
たった一度奇妙な出会いと不思議な会話をしただけの間柄だというのに、彼にまた会いたいと思って仕方がない。
ドラゴンでもなく人でもない、銀髪が美しかった青年。
名前すら教えてくれなかった男のことが、アリシアは気になり続けていた。




「銀の髪っていったらルビスの愛し子のことじゃないの?」

「ルビスの愛し子って、あの?」

「それしかないでしょ。最近は表に出てこないけど、銀髪はあの一族にしか継がれない魔力の証って言うじゃない」

「そうなんだ・・・」

「そうなんだってアリシア、あんたの世間知らずの変わり者もここまできたらただの無知よ。
 ・・・で、その賢者様にどこで会ったの?」

「森の中。・・・信じられない話かもしれないけど、その人は・・・・・・」




 不意に頭が痛み、言葉が継げなくなる。
頭の中が真っ白になるような鋭い痛みに、自分が何を言おうとしていたのか思い出せない。
目の前で怪訝な表情を浮かべた友が森で、と尋ねている。
森で、何だっただろうか。
森での出来事を思い出そうとしたが、何もなかったとしか言えない。
アリシアは頭から手を離すと、何だったかしらと呟いた。



「森で・・・、何だったのかしら?」

「だから森で会ったんでしょ、愛し子に」

「愛し子・・・? ・・・・・・いいえ、会ったのはリカントだわ」



 一瞬の間の後、友人がそんなものだろうと思ったと言いながらけらけらと笑う。
そうだ、森ではリカントに遭っただけだ。
アリシアは違和感の残る頭を必死に宥めると、無理やり自身を納得させた。





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