1.夜行性家族
人間は欲深い生き物である。
今の状況には満足しきれず、常に不満を抱き生きている。
凌統は、主に夜にしか忍んで2人で逢えない環境が不服だった。
どんな形であれ一緒にいたいと願っていたあの頃の自分が、聖人君子のように思えてならない。
「申し訳ございません、わたくし、なにやら眠たくて・・・」
居候というか侍女というか下女というか、ここぞとばかりに陸遜に扱き使われている恋人の夜は、貴重な休息の時だった。
逢瀬をするくらいなら眠りたいというのが本音なのかもしれない。
朝は朝で早い時間から起き出して武芸の鍛錬をしているようだし、これで夜中に逢ってしまえば一体いつ眠るのだろうと
不安に思う時もあった。
しかし凌統は、やはりそれでも逢いたかった。
日中は姫君から甘寧から呂蒙からと邪魔をされている今、本当に誰にも邪魔されず2人きりになれるのは夜しかないのだ。
恋人と2人きりになりたくて何が悪い。
下心を隠さないで何が悪い。
「公績様のお顔を見ると、ああ今日も終わったのだなと思い気が抜けてしまいます・・・」
「・・・今日もお疲れ様。・・・また今度来るから」
また今度がいつになるのか、見通しは全く立っていない。
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