5.一日一回立ち眩み
今日は朝から調子が悪い。
いつも以上にきりきりとマルチェロの下で働いて、学校で雷撃をいつも以上にお見舞いしたのが
悪かったのかもしれない。
魔力不足か体力不足か、おそらくは両方からくる立ち眩みだろう。
「さんも元気ないし、僕いつの間にか嫌われた?」
心当たりはまったくないが、ある日を境に避けられている気がする。
何か気に触ることをしてしまったかと記憶を辿るが、これといった事件はない。
もしかして、朝の日課が知れてしまったのだろうか。
そう思いはしたものの、これといった変化はなかった。
そもそも彼女は、自分と同じ学校の生徒だということにまだ気付いてはいないだろう。
学校での自分は分厚い伊達眼鏡をかけた、プチ変装状態だ。
どこにでもいるいかにも冴えない学生が、キラキラと輝くの目に留まるはずがなかった。
(あ、さんだ・・・)
廊下を歩いていると、前方から大好きな彼女がゼシカと共に歩いてくる。
歩く早さをちょっと緩めてちらりと彼女へと視線を送れば、沈んだ表情を浮かべていると知る。
やっぱりおかしい、何があったんだ。
声をかけるわけにもいかず立ち尽くしていると、おーいと暢気な声がした。
「おーい、お前今日掃除当番なー」
「・・・さん・・・・・・?」
「あっ、ばかっ、ククール・・・!」
今日ほどククールを恨んだことはない。
ククールの声にが立ち止まり、くるりとこちらを振り向く。
さんですかと小さな声で尋ねてくるが、はいそうですとは言えない。
「さんですよね・・・・・・。なんでこんなとこにいるんですか・・・・・・」
「ひ、人違いじゃ・・・」
「・・・さんなんか大っ嫌い!」
大人しくて控えめで穏やかな性格のが、ばんと大の男を突き飛ばした。
眼鏡が外れた顔を見ればすぐにわかる。
は廊下に尻餅をついたまま動かないを見下ろしもう一度大嫌いですと呟くと、
どこかへ駆け去ってしまった。
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