1.ぎゅうって、捕まえていて
「よしっ、そのまましっかり押さえ込んどけよ!」
「ちょっ、馬鹿、俺が死ぬって!!」
たまたま踏みつけた先にメタルスライムがいて、冒険者としての血が騒いでそのまま捕獲した。
すごいねバースと絶賛してくれるエルファには笑顔を向けられるが、正直我らが勇者リグの方は向きたくない。
いや、彼というよりも、彼が手にしている毒針を視界に入れたくなかった。
「まーだそれ持ってたのか!? てかやめろって!」
「大丈夫、勘は鈍ってないはず・・・」
「鈍るほどに元々大した技能なかったろうが!」
本来装備できるはずもない魔法使い専用の武器を手にしている姿は、傍から見ればとても滑稽だ。
しかし、一撃必殺の可能性も秘めているあれを間近に見ているバースにとっては地獄だった。
ただでさえ小さなメタルスライムを羽交い絞めにしているので、外から見える本体部分はほんのわずかしかない。
9割バースの肉体という厳しい条件を、リグが見事にこなすとは思えなかった。
一歩間違えれば自分があの世逝きだ。
笑えない冗談やパフォーマンスの巻き添えは勘弁してほしい。
「いくぞ・・・・・・。てやっ!」
「ぅ、わ・・・・・・・」
「きゃー、バース!? 大変ライム、バースが、バースが!!」
意識が遠のき、がっちりホールドしていたメタルスライムが逃げ出す。
なんだか、今度は自分が捕まえられてる気がする。
あの世へ逝きかけているバースを、エルファがしっかりと抱きこんでいた。
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