お題・4
4.少し痛いくらいは我慢して



 リグは、手に入れたばかりの戦利品を眺めていた。
隣にはバースもいる。
これ売ったらいくらになるかなと早くも計算を始めた彼は、本当に逞しいと思う。




「最近、猫耳ってのが流行ってるって聞いたんだけど」

「いつからおれらは現実世界の話題も口にするようになったんだ」

「世の中ファンタジーだけじゃやってけないんだよ、きっと。・・・それでさ、これも猫耳に入るのかな」


「それ、猫耳じゃなくてただの着ぐるみだろ」




 バースはリグの腕の中の着ぐるみをちらりと見た。
じめじめと暑苦しい時期に着ぐるみなんて、見るだけでも暑くなってくる。
大体、これのどこを見たら猫耳になるというのだ。
うさ耳バンド的なものが猫耳になるためのアイテムだろうに。




「つべこべ言わずにとっとと売るぞそれ。金ないんだから早く売っ払いに行かないと」

「・・・ライムかエルファが一度着た方が高く売れないのかな」

「おいリグてめぇいつの間にそんな悪どい勇者にクラスチェンジしたんだ。氷漬けにしてそのまま打ち砕くぞ」

「冗談だよ。そんなこと言った時点でエルファはともかく、ライムにはぼこぼこに「しちゃうわよ」





 ゾンビキラーを煌めかせにこやかに微笑むライムを見て、リグとバースは顔を見合わせた。
これはまずい、ライムがいつもの5割増しで美人に見える。
怒れる美女はものすごく美しいのだ。




「俺は悪くないからなライム! 今日は最初から最後までリグが犯人!」

「俺だけに押しつけんなよ。おまえだって猫耳エルファ、ちょっと想像しただろ?」

「するわけないだろ!? エルファは猫ってか犬とかウサギとか・・・げ」





 猫耳も犬耳もうさ耳も大した違いはない。
ライムはリグとバースに向かって、勢い良くゾンビキラーを振り下ろした。





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