お題・6
6.もっとずっと強く感じさせて



 喜びを噛みしめるとは、こういうことを言うのだろう。
イザークは久方ぶりの表舞台に、奇跡すら感じていた。
それもこれも彼の自慢の奥方のおかげだということを彼は知っているのだろうか、いや、知らなくてもいいだろう。




「私やっぱり思ったのよ。イザークってかっこいいわね」

「なんだ、今更気付いたのか? 俺のどこを見てたんだ」

「こないだヘタリアの某CPサイトさんにお邪魔したら、たまたまそこにイザークもいたのよ。
 糸のように細く透き通る銀色の髪に、涼やかな水色の瞳。
 無残な傷跡も似合うだなんて、性格除ければ非の打ちどころもない男前だったわ」





 1年に一度あるかないかという妻の手放しの褒め方に、イザークは心の中で雄叫びを上げた。
性格に難ありと言われた気もするが、そこはあえて聞き流しておこう。
あまりに褒めすぎたものだから、ほんの少しのスパイスを加えたくなっただけだ。
さすがは料理も得意な我が妻だ。
味加減もばっちりだ。
イザークは、自分の味覚が狂いに狂っているということに気付いていなかった。
これも1つの愛のなせる技なのだ、気付く方が難しいというものだ。




「俺もお前のことは昔から美しいと思っていたぞ。負けん気の強い性格も愛している」

「ありがとう。・・・えへへ、なんだかすごく幸せだね」

「そうだな。俺の誕生日たる8月でなくてなぜ7月に登場という疑問も浮かぶが、今はこの気まぐれな奇跡を満喫しておこう」
「そうね、私も次々に現れる新参者ヒロインさんたちに負けないように、腕を磨いとかなくちゃ」


「安心しろ。お前に勝てる女など宇宙中探してもいるものか。人工雷精製男が攻めてこようと、俺が必ず守ってみせる」





 最強の嫁と最強の男の戦いが、今始まる(わけがない)。





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