01.月の引力に負けたの
実際のとこ、かぐや姫ってほんとに月の使者と一緒に帰ったと思う?
まるでこちらが答えを知っているかのように尋ねてくる彼女が、月どころか異界の住人に思えて仕方がない。
南雲はきらきらと目を輝かせ答えを待っている異邦人に、知るかとぶっきらぼうに言い放った。
「えーだって南雲くんバーン!っていって元宇宙人だったじゃん。なんで知らないの?」
「そもそもあんたの俺に対する認識が違ってるし、どうして俺が知ってるって思うんだよ」
「バーン!くんが宇宙人だったから」
「その『だった』ってのがおかしいんだよ、何だよ元宇宙人って」
「ほんとのことでしょ。基山くんも言ってたよ、元宇宙人でぇすって」
「じゃあヒロトに訊けよ!」
「えーだってー」
南雲くんの方が話しやすいし好きだから、好きな人といっぱい話したいって思うの普通じゃない?
ことんと首を傾げながら尋ねる姿は、まさに歩く平気だ。
好きって言われた。好きな人って言われた。
好きな人に投げかける質問にしては少しいやかなりぶっ飛んでいるが、いつの間にか好きな人になっていた!
彼女は好きな人のかっこいいところが見たくて、あえてこちらに難題を吹っかけているに違いない。
きっとそうに決まっている、これが漫画やドラマでよくありがちな愛の試練というやつなのだ。
南雲はごくりと唾を飲み込んだ。
いかにもそれっぽいことを考えて言うのだ。
やればできる、やらなきゃならない。
だって俺は、地球産だけど元宇宙人のハイソルジャーだから!
「つ・・・月から降りてきたビームに乗ったとか・・・。ほ、ほら俺らもそういう演出してたことあったしよ!」
「あったっけ? 私サッカー以外興味なかったし宇宙人のこと星の屑になればいいって思ってたからわかんない」
「してたんだよ! 他の連中はともかくお、俺のこと好きならもう少し意識してくれよ・・・。
てかするだろ・・・」
「うーん、ごめんね・・・。私やっぱりそんなにバーン!くんのこと見てなかったっぽい」
でもありがとね、おかげで夏休みの自由研究終わりそう。
そう言い残し軽やかに去っていくツッコミどころと笑顔満載の異邦人に、南雲は絶対にやめろと絶叫した。
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