05.妖しげな雨音
またやられた。
どうやら敵陣には呪いを得意とする将がいるらしい。
は今まさに火計を仕掛けようとしていた動きを止めると、同じく忌々しげに空を仰いでいた陸遜へ視線を移した。
「・・・私に考えがあります」
「はい」
「まず敵の術者を叩きます。その後散開してそれぞれ火計を発動、敵本陣を丸裸にします」
「承知いたしました。して、敵の目星はついておいででしょうか」
「今斥候を放っています。直に戻るでしょう」
「わたくしたちの策を幾度となく葬ってきたこの報い・・・」
「「必ずや火をもって贖わせてみせましょう!」」
意気軒昂なのはいいが、もう少し無難な行軍をしてくれないだろうか。
例えば恋人に護衛をつけるとか、例えば恋人に自分を同行させるとか。
凌統は頭の下でとんとん拍子に決まる作戦に、あのちょっとと手を挙げた。
ほら、2人してきょとんとして俺を見上げてくる。
何か問題でもって顔で見てくるんじゃない、問題しかないから声を上げてるってどうしてわかんないかな、
うちの軍師さんと俺の恋人は。
凌統はあのさあと言うと、恋人をくいと自身へと引き寄せた。
「せめて俺も当たらせてくれよ。俺が敵さんの相手してる間に2人が持ち場に行くとかあるんじゃないかい?」
「いかがでしょうか陸遜殿。このままでは公績殿がいささか可哀そうです」
「仕方ありませんね・・・。では凌統殿は殿と進軍して下さい」
「当然。俺がいるからにはには指一本触れさせないっての」
それでは大火計部隊、出陣しましょう。
陸遜の号令と共に、敵拠点を一網打尽にすべく大火計の策が発動した。
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