07.一瞬の隙も逃さないように
今の主は、他人とは少しどころかかなりのんびりしている人物だと思う。
動きが緩慢だとかぐずぐずしているとかではなく、生き様に焦りがない。
人間は、80年やそこらで一生を終える呆気ない存在だ。
だから本人が意識していなくとも、生き急いで時を過ごしている様子はよく見る。
のんびりしたいと言いながらも実際にのんびりと過ごせば、一日を無駄にしたかもしれないと嘆き後悔する。
今の主は放っておけば2年でも3年でも眠っていられそうな、山姥切国広にとって彼女はそれだけのんびりとしすぎた主だった。
「なんだか、そういうこと気にしてくれてる国広くんの方がよっぽど人間みたい」
「茶化すな」
「ごめんね。でも私やる時ちゃんとてきぱきしてると思うよ?
雨降りそうだなあと思ったらさっさと洗濯物取り込んでるし、あと、畑の収穫とかすっごくてきぱき!」
「審神者として屋敷にいるより、畑にいる方が生き生きしてるからな・・・」
「拗ねてるの? お野菜よりも相手にされてなくて寂しかった?」
「・・・別に。あんたがやりたいようにやればいい、俺はあんたを守るだけだ」
「そ。よーし、じゃあ今日は国広くんも畑のお手伝いしてもらおっかな!」
「はっ、写しには泥が似合うと言いたいのか?」
修練用の木刀を置き、腰を上げる。
一足先に畑に入り仕事に勤しんでいる主は、頬が土で汚れていることにも気付かず楽しそうだ。
のんびりして生き急いでいないのは、彼女がまるで時々子どものようだからなのかもしれない。
山姥切は主の元へ歩み寄ると、こちらに気付き顔を上げた彼女の頬の土を払った。
元に戻る