05.なんとも思ってないのに優しい手
ゆらりゆらりと、手招きするようにたくさんの手が揺れている。
1本だけでなく、あんなにたくさんの腕が招いているのだ。
きっと向かう先は天国に違いない。
ふらふらと誘われるがままに手へと歩を進めたリグは、ライムに腕を掴まれ立ち止まった。
「リグ、騙されちゃ駄目よ。あれはマドハンド、魔物」
「はっ」
「マドハンドは一斉攻撃で一気に叩かないとキリないから、バースとエルファに任せましょ」
リグは我に返ると、改めて眼前の手招きする手を見つめた。
なるほど確かに、よく見ればその手は土気色でとても天国へ誘う美しさとは思えない。
それもこれも、アレフガルドが常夜状態でいるのがいけないのだ。
太陽さえあればマドハンドはマドハンドときちんと認識できるのだ。
「ラーの鏡で照らせば案外太陽戻ってきたりして」
「そういうのは戦い終わってからやりなさい! ほら、早くこっち片付けるの手伝って!」
爆発で吹き飛ぶマドハンドを見て安心したのか、ごそごそと袋の中からラーの鏡を取り出そうとしているリグを
ライムが叱責した。
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