お題・6
06.たくさんの『特別』



 長く生きていれば、その分だけ大切なものが増えてくる。
バースはいつの間にやら片手では足りなくなった大切で特別なものリストに、驚きで隠せないでいた。
昔は家族ただ1つだった。
エルファが増えたのは青年期で、家族は同じ頃に大切でもなんでもない、どちらかといえば憎らしい存在へと落ちぶれていった。
エルファと再会してしばらく経つと、今度はリグとライムというかけがえのない大切な仲間で友人ができた。
おそらくこの2人とは、旅が終わっても仲良くやっていける。
仲良くしたから、もう少し優しく扱ってくれと機会があったら頼んでおこうと思う。
本当にリグにはいつも手厳しい扱いをされる。
母の遺伝そのままにいびられ虐げられ、リグ一家との愛称の悪さが如実に現れている。
相性が悪いはずなのに親友とは、世の中少しおかしい。
自分にないものを欲しがった結果なのかもしれない。





「確かにリグは、俺みたいに顔で得しちゃないな」

「ほう? じゃあ俺とお揃いにするためにその顔刻んでやろうか」

「はっ、やれるもんならやってみろよリグくん」

「ラ、イ、デ、イ、ン」

「マホカンタ」





 ばちばちどーんと、魔法の壁に跳ね返された雷が地上に落ち土をごっそりと抉る。
ぼこりと開いた窪みを見下ろし、リグとバースはどちらからともなく笑みを交わし合った。





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