探し物占い恋占い
「高台から眺める景色が綺麗だね!!」
「そう言ってるが可愛いよ。・・・なんだよ、冗談だって、気付けよ。」
「冗談でを口説かないでよ。それにの可愛さは本物だし。」
稀代の占い師、ルイネロの訪問前に、初めてやって来た町の景色に目を輝かせるだった。
その後ろではこんな2人の会話に痺れを切らしたゼシカがククールを燃やしたとかそうでないとか。
どっちにしても、この3人がやっている事はどこに行ってもあまり変化が無い。
そしてヤンガスは例のごとく、何も知らない。
「なに? 探し物がどこにあるか占ってほしい?
わかった。少し待て、この水晶玉に尋ねん事にはわからんからな。」
「お久しぶりです、さん、ヤンガスさん。
お父さんは探し物を探すのがとっても上手なんですよ。」
何の前触れもなく訪れた達を、ルイネロとその娘、ユリマは喜んで出迎えてくれた。
お友達にも、お父さんの仕事を宣伝しといてください、と言う娘の姿には、けなげさよりもたくましさの方がより勝って見える。
達は手短に、しかし要点を上手くまとめて月影のハープについて話した。
初めは難しげな顔をしていたルイネロだったが、重々しく頷くと早速水晶玉に向かった。
しばらくして、彼の水晶球が何かを指し示してきたようだ。
「若い王の姿が見える・・・。気弱な王だが、最近は精力的に政を行っているようだ・・・。
ほう、城の中に噴水があるのか。」
「若い王様、ちょっと頼りなくって、でも最近元気を取り戻した・・・。
はいっ、私1人だけ心当たりあるよ!!」
「僕も。あの人だよね、アスカンタのパヴァン王。気弱な王って言ったら、あの人ぐらいしか思いつかないし。
でも良かったよ、あそこの王様なら、この間たくさん恩を売っておいたから月影のハープぐらいくれるよ。」
「良かったわね、私達の足で、しかもルーラでひとっ飛びだなんて。」
意外にもかなり近くの場所にハープがあると知り大喜びの達。
ルイネロも客の喜ぶ姿を見てにこやかに頷いている。
がありがとうございますルイネロさん、と仲間を代表するかのように深々とお辞儀をする。
無事にハープの在り処もわかり、いざアスカンタへ行こうとした彼らをユリマが引き止めた。
「せっかくおいでになったんです。さん、恋占いなんてしていきませんか?
お父さんそっちの占いの方もかなり当たるんですよ。さんとの相性なんて気になりませんか?」
「「え。」」
思いもかけないユリマの提案に同時に反応すると。
彼らが何も言わないにもかかわらず、ゼシカ達は乗り気だし、ルイネロだって水晶玉に向かい直している。
2人はほんの少し紅くなった顔を見合わせると、仕方なくルイネロの前に立った。
ルイネロが水晶玉を操る。
すると、先ほどの物探しの時には出なかったまばゆいばかりの光が、水晶玉から発せられた。
光はすぐに消えたが、突然の事態に驚く6人。
本職のルイネロは咳払いをして周囲を黙らせると、深刻に言った。
「占いでわからない縁のようだ。あるいはその縁を占うにはこの水晶球には荷が重いのか。
どちらにしても、お前達2人は不思議な縁によって結ばれているようだ。」
「それはいいって事でがすか、悪いって事でがすか。」
「それもわからん。すべてはお前達のこれからの行いと、天が決める事なのだろう。」
この占いはここまで、と占いを打ち切ったルイネロだったが、とはそれこそ訳のわからないと言うような表情をしていた。
いったい自分達の縁に何の不思議さがあるのだろう。
占いでわからない、という結末にはいくらかほっとしたが、あの水晶玉から発せられた光が意味しているものはなんだろうか。
これは達が安易に考えていた、相性云々の問題を通り越しているのかもしれない。
しかしそれでも構わない、とは思っていた。
人への感情は、占いで決まるものでもないし、天が決める事でもない。
自分がどれだけ相手の事を想っているのかなのだ。
が自身の事をどう思っているのかは、今はわからない。
ただ自分がの事を想っているのと同じように、相手もそうだったのなら、これ以上に嬉しい事などはないのだ。
はいまだに複雑な表情をして考え込んでいるに、わざと明るく言った。
「占いなんて、当たるかそうでないかは僕達が決めることだよ。
相性なんて尚更の話。だからそんなに気にする事じゃないよ。」
「わかってるよ。でも私が気になったのはそんなどうでもいいことじゃなくて、
なんだろ・・・、ここね、昔何かあった?」
どうでもいいこと、と簡単に片付けられてしまったことには少々ショックを受けながらも、の聞いている昔の事を思い出していた。
とヤンガス、そして化け物扱いされたトロデ王がこの町にやって来たほんの数日前、ここで火事があって家が1件焼けた。
あれだけ跡形も残らないほどに焼けて、空気も乾燥していたと言うのに、まるで何かに操られたかのような燃え方だった。
飛び火もしていない、人々の間では放火とか、火の不始末などがささやかれていたが、もしかしてはその事を聞いているのではないだろうか。
はルイネロの家を出て、火事のあった家へと行く途中に話し出した。
「この町に最初に入ってきた時、なんだか最近町の中で凄い魔力が放出された気配を感じたの。
それもかなり性質の悪い、黒いって言うのかな、私とかゼシカが使っている魔力とは明らかに違うタイプの。
どこからそんな凄いの来てるかわかんなかったんだけど、達の話聞いてたら、どうもその火事のあった家からだなって。」
「あそこの家で殺されたのはライラスさんっていう魔法使い。
昔弟子だったドルマゲスに殺されたっていうのが僕達の見方。
ドルマゲスは、ライラスさんのほかに、ゼシカのお兄さんのサーベルトさんも殺したんだ。そして院長も。」
5人は焼け跡に足を運んだ。燃やされたはずなのに、すでに鎮火しているのに、なぜだか暖かい。
今はまだわずかな暖かさだが、時間が経つごとにそれは大きくなっていきそうな、そんな包み込むような暖かさをは感じた。
ヤンガスが言った。
「ライラスが大切に持っていた魔法の事ならなんでも書いてあるという本がなかったそうでがす。
なんでもそれは特殊な加工がしてあって魔法で出された炎でも燃えないとか言われてるんでがすがね。」
の心臓が跳ねた。大いに心当たりがある。
修道院の近くでのんびりと暮らしていた頃、ライラスが魔法の本を持ってやって来たのだ。
今、馬車の中のの私物入れの底にそれは丁寧に保管されている。
いまだ誰にも見せた事はない。にも、ゼシカにも。
すべてを見たわけではないが、中にはドルマゲスの欲しがりそうな呪文だって存在した。
人を簡単に殺す呪文、誰かに姿を変える呪文、より強力な呪いをかける呪文。
一歩間違えればとんでもない事になってしまう呪文の数々には思わず本を閉じたほどだった。
もしもこれがドルマゲスの手に渡っていたら、とは改めてぞっとする。
彼女の表情に気がついたのか、ククールが心配げに顔を覗き込んだ。
「、お前大丈夫か? なんか顔色悪いぞ? 疲れがたまってんじゃねぇのか?」
違うよ、と言って首を横に振るだったが、そんなことを言っても気分が良くなるはずはない。
ただ、真実が、知りたかった。
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