終わりの始まり 結
は複雑な思いを胸にトロデ王の前に跪いていた。
なんだか少し話が違う気がする。
騙された感も否めない。
にこにこと王の隣で笑っているミーティアに目をやると、大きなご褒美でしょうと言われる始末だ。
何度嫌だと言っても受け入れられないのだから、もう諦めるしかないのだろうか。
姫の陰謀に巻き込まれるしか道はないのだろうか。
「何度も言いますが王、近衛隊長なんて大任、僕は辞退します」
「お前以外に誰がなれるというのじゃ」
「そうですわ。それにさんがいるのに兵卒のお給金だけで生活していこうだなんて、世の中甘くはないのですよ?」
「じゃあいっそのこと給料上げてください、新婚手当てとか扶養者手当てとか、そんなのいろいろあるじゃないですか」
私は別に構わないんですけど・・・と控えめに発言するには、気にしないでと笑顔を向ける。
好きな女の1人養えずに男だなんて名乗っていられない。
ミーティアのおつかいを無事に果たして意気揚々と帰ってきたらこれだ。
大きなご褒美というくらいだから、城の外れに小さなマイホームとかウェディングドレスとか、そんな幸せに溢れたものだと思っていた。
近衛隊長の役職です嬉しいでしょうと言われても、はいそうですかと印綬を受け取るわけにはいかなかった。
忙しくなったらせっかくのとの新婚生活が満喫できないではないか。
姫はその分彼女一緒に楽しめる時間ができていいだろうが、それはにとっては魔の時間に他ならない。
もしかして姫は妬んでいるのではないかと、は疑いもした。
「辞退など言うでない。家庭の経済環境が良くなれば家族を増やしたくなるもの。長い目で見て考えんかい」
「いくら王でも僕との幸せ家族計画に口挟まないで下さい」
「やめようよ・・・。ほ、ほら、私は別にが夜遅く帰ってきても平気だよ?
ちゃんと起きて待ってるから、ね?」
「夜遅くまでなんてとんでもない! お腹の子に障ったらどうするのさ!?」
「「え?」」
うっかりぽろっと出てしまった事実には固まった。
そうでしたかではやはり隊長になるべきですよ、そうですよねお父様とまくし立てるミーティアの言葉もぼんやりと聞く。
言ってしまった、もう少し生活が落ち着いて隊長就任騒動も一件落着してから宣言するつもりだったのに。
こんな感じだから、いつまで経っても馬鹿とか妻馬鹿とか言われるんだ。
もっともそれは褒め言葉としか受け取っていないのだが。
「のう、・・・父親たるものもちっとしかっとせんか」
「・・・・・・・はい・・・・・・・」
トロデーンは、今日もまことに平和だった。
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