メダパニック ~主人公の場合~
が混乱に陥った。
これは本当の混乱である。
決して、頭が爆発したとか、ぶち切れたなどではない。
メダパニダンスを食らったのである。
しかも強力そうな。
「!?」
混乱直前の彼の耳に残ったのは、おそらく大好きなのきれいな声だろう。
まるで戦闘の役に立たなくなったを庇うように、
は呪文を発動した。
その威力で怪物たちは引っ込んだのだが。
やはり混乱の影響だろうか、はどこかボーっとした様子だった。
普段の様子とは全く違う彼の様子に、ヤンガスたちは当然心配した。
普段の彼なら、が自ら前線に出て攻撃呪文など発動すると、
真っ先に心配するのだから。
「おい、、大丈夫か?」
「うん・・・。」
混乱した頭で返事を返されてもそれはとても信じがたい。
だが、彼の返事の様子からして、ククールは少し安心した。
仲間たちに危害を加えるような性質の悪い混乱をしていないからだった。
たち一行には混乱の関して、いつぞやのドン・モグーラ戦で同士討ちをしたと言う
苦い経験がある。
これ以上の余計な戦闘は避けたかった。
「でも、
あんまり無理しちゃだめだよ?」
も心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
もっとも彼女のそんな行動も、混乱中のにはあまり意味がない。
ように思われた。
というのは、今まではたいした感情を表さなかった彼が、の顔が近づいたとたん、
突如としての顔が赤くなったのだ。
滅多にない、否、とても怒りそうにないこの奇跡の瞬間にを除く、
彼の本性を知り尽くしている仲間たちは怖気をふるった。
(これはもしかして、やばいんじゃないか!?)
彼らの憶測はまもなく的中する事になる。
あの爽やかに黒いが、なぜだろうか、混乱した為だが、
白い純情少年に変身してしまったのである。
いや、彼はもともとは純情なのだ。
が、ちょっとばかし独占欲とか嫉妬心とか愛情の類が深い為、こうならざるを得ないのだ。
それでも、普段の彼を見慣れているゼシカたちにとって、彼のその後の行動は恐ろしいばかりで。
「や・・・、・・・。
そんな・・・。」
「?
やっぱりどこか具合が悪いんじゃ・・・?」
彼の変わった事などまるで気付く気配のないは
ますます心配そうにに近づく。
しかも、恥ずかしさなのか、嬉しさなのか、こころもち震えている彼の手を優しく握りながら。
「大丈夫だから!!
だから・・・、そんなに心配しなくていいよ。
・・・っ!!」
ここまできたら、いつもの彼の姿などどこにも見ることはできない。
顔をこれ異常ないほどに真っ赤にしながら、
しどろもどろに返事をするの姿は、一見すれば初々しくて微笑ましい限りなのだが、
これをやっているのがあのなのだから、どこか笑えない。
笑ってもそれはひきつり笑いだ。
それにしても、いったいいつまで彼の混乱状態は続くのだろうか。
試しにククールが軽く彼の後頭部を殴ってみた。
が、変化なし。
もはやなす術なし、である。
と思われた矢先。
「なんか、今日のはちょっと元気ないよ?
やっぱり混乱しちゃったからかな・・・。
それともどこか怪我して・・・。
そういえば、戦いのとき、私を1度庇ってくれたよね。
もしかしてその時にどこか打ち所が悪くて・・・!!」
のそんな切羽詰ったひと言にははっと我に返った。
おそらく彼の本能が告げたのだろう。
このままお前が混乱してるのか、ただ照れているのかは知らないが、
とにかくこのままだと、お前の好きな人は自分の責任だと思い込むぞ、とか何とか。
そして、は元に戻った。
「、そんなこと言っちゃだめだよ。
僕はなんでもないよ。
ただ混乱してたからだと思う。
僕はいつもに助けられてるんだ。
傷つくわけがないじゃないか。」
の前ではいつもは素直な少年である。
あとがき
これでも白くしたつもりです。オチがないとも言います。きっと、ヒロインとの会話が多い作品なら、彼はいつだって白いと思います。
うちの主人公が黒く見えるのは、おそらくそうでもしてないと、ヒロインの身が危険だからでしょう。
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