メダパニック ~の場合~




 なんだかんだ言って、先日のの混乱騒ぎに苦労したドルマゲス退治を目指す一行。
今日もそんな彼らにメダパニの恐怖が襲いかかった。
今回のメダパニ人間は・・・







 は呪文でもって怪物を攻撃する。
魔力の高い彼女にとって、使えない呪文は昇天系の呪文ぐらいである。
そんな彼女にももちろん弱点はある。
それはヌルヌルした怪物は超絶的に苦手な事。
海の怪物たちもその例に漏れない。
したがって、にとって、海上での戦いは避けたい物だった。





 そんなこんなで、ある日、事件は起こった。
優雅に船の旅、とまではいかないものの、それ相応にゆったりとした旅を送っていた一行。
そこに怪物たちが現れた。
マリンギャング2匹と大王イカ2匹。
特に大王イカはしぶとく、攻撃力も強い。
しかもこの怪物相手だとの攻撃はまず期待できないので苦戦する。
の戦闘事前シュミレーションの中には、たまに混乱攻撃をするというだけの
マリンギャングの姿など入ってはいない。
所詮は雑魚なのだ。



「よし!!
 ヤンガスとゼシカと僕は大王イカを!
 ククールとはマリンギャングを頼むね!!」


「任せて!!」






 彼の指示に仲間たちはそれぞれの相手と対峙する。
の配慮もあってか、の相手はマリンギャングだ。
このくらいの相手なら、彼女の呪文で吹き飛ばせる。
・・・と思われた。
が、そこに大きな落とし穴があった。











 マリンギャング2匹vsククール&
1匹目は難なく攻略。
海のもくずとなった。
そして運命の2匹目。
呪文の詠唱に入ったにマリンギャングが牙を剥いた。
最も奴の攻撃はさしたるダメージを受けないので、心配するほどでもないのだが。





「きゃっ。」



は痛くはなかったものの、少しばかりびっくりしたように声を上げた。
ククールがすぐさま残りのマリンギャングを海に沈める。




「大丈夫か?
 ?」




ククールの問いかけに彼女の反応はない。
かわりに大王イカの方を向いて、大きな叫び声をあげた。



「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 いくらヌルヌルとしたイカが嫌いな彼女でも、こんな戦闘中に声を上げたことはない。
むしろ、こんな事態は初めてだった。
驚きはこのままでは終わらない。
彼女の声に反応した大王イカが彼女の方に襲い掛かってきたのだ。






 大王イカvs
この戦いはどう見たって怪物たちのほうが有利すぎる。
慌ててが中に割り込もうとするが、その前に発せられたの叫び声に気を取られた。
そして同時に耳を疑う。




「いやぁぁぁっ!!
 来ないでぇぇぇぇっ!!
 メラゾーマーーーーー!!
 イ、イオナズン!!」




っ!
 落ち着いて!!」



 ゼシカの呼びかけは遅い。
彼女が呪文、しかも強力なのを2つを続けて発動した後だったからだ。
たいてい、いや、ゼシカほどの魔力を持った者でも、
メラゾーマとイオナズンを立て続けに発動するのは自殺行為に等しい。
それをは躊躇なく発動した。
イカからは断末魔の叫び声が聞こえる。
当然だろう。
しかし仲間は誰もイカの叫び声など気にしない。
怪物たちが消滅し、のへたり込んだ姿が
露わになった途端にそれぞれ彼女の元に駆け出した。




「やだ・・・。
 イカはやだ・・・。」



 呪文のようにぶつぶつと呟く彼女だが、その瞳はどこかうつろで。
いつもの生き生きとした雰囲気はない。
まるで、自分じゃない、他の何かに操られているような・・・。
ククールはそう思ったとき、ひとつの仮説を思い浮かべた。
これはもしかして、先程マリンギャングから受けた混乱攻撃の仕業か、と。
そう思うと、それは真実のように思えてくる。
いや、そうに違いない。そうでないと、彼女の行動に納得がいかないからだ。




「ったく・・・、いったいどうしちゃったんだよ・・・。
 いつもはこんなに激しい攻撃はしないのに・・・。
 それに、あれだけ前線に出て戦ったら危ないとも言ってるのに・・・。」
「ちがうぜ、。」





 いまだに彼女の行動を不思議がっているとその仲間たちに
ククールはマリンギャングとのいきさつを話した。
その話を聞いているうちにを初めとする彼らの顔が青ざめていく。
たかが混乱ひとつでこんなに人の性格が変わるのだ。
現にはものすごい叫び声こそあげてはいたが、
かつてない呪文の発動(連続)で強敵・大王イカを一瞬のうちに葬ったのだ。
この現実を突きつけられて、顔を青ざめないでいられる人がどこにいるだろうか、いやいないだろう。
とにかくククールはまだ床に座り込んでやだやだとごねているに近づいた。
人の気配を感じた彼女がククールのほうに顔を上げたとき、
再び悲劇が起こった。





・・・背後にイカ1匹。


「もう来ないでぇぇぇぇぇっ!!」




再び発動された巨大な火の玉はククールの顔、否、ククールのさらに後ろのイカめがけて飛んでくる。
マト○ックス顔負けの避け方をした彼は同時に誰ともなく叫んだ。



「誰かっ、
 にマホトーンっ!」


彼の声を聞き終えるかその前に、の決死のマホトーンが聞こえた。












 「みんな、本当にごめんなさい!!
 私、何にも覚えてなくて・・・。
 私、そんなにひどかったの?」
我に返ったに仲間たちはもう何も言えなかった。






今回の教訓。たとえ弱くても、マリンギャングは優先的に倒す事。




あとがき

メダパニとか、それ相応の攻撃をする魔物探しに時間を費やしました。
世界中あちこち駆け回って、ようやく見つけたマリンギャング。ヌルヌルつきです。




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