お願いビーム
魔物たちとの戦闘の時、ゼシカがセクシービームを放った。
彼女の放ったビームで魔物は混乱し、戦いはたちの勝利に終わった。
その戦闘の後の、ククールの一言。
「ゼシカのセクシービームはもう見飽きたな。いや、嫌いなわけじゃないぜ? でもな、俺はのビームも見てみたいと思ったわけさ。
もそう思うだろ?」
「ばっ・・・!! 何言ってんだよ、ククール!! そんなわけ・・・、?
気にしない方がいいよ? どうせまたこの馬鹿の言ってる世迷い事だから・・・。」
「馬鹿とはなんだ。俺はただお前の意見も代弁して・・・」
その後のククールの言葉を聞くことはなかった。
いつものお決まりのパターンでゼシカのメラゾーマが炸裂したからだ。
「気にしない方がいいわ、。あんなのただの色ボケが言ってることだわ。は何もしなくても充分可愛いんだから」
心なしか表情が沈んでいるように見え、ゼシカが慰めるようにに語りかけた。
もっとも、表情など沈んではいない。
彼女が暗いのは呪文の発動直後だったからである。
そうだ、セクシービームなど必要ないのだ。
そして数日たったある日。
の持つ中でも最強ともいえる特技が顔を出した。
事の発端は防具屋だった。
「そろそろの防具も変えた方がいいんじゃないかな。ほら、の鎧もうボロボロだよ? すごく危ないと思うな」
の身を案じて提案したは、彼に新しい鎧を買うよう勧めた。
しかし、ここのところ金銭状態があまり良くない。
できれば出費は差し控えたかった。
そのことをに告げたところ、彼女はでもと食い下がって、挙句の果てに禁断の技を披露した。
「私は、の身体が心配なの。もしも怪我とかしちゃったらすごく悲しい。
今あるお金よりも、の安全の方が大切だと思うの。お願い。新しい鎧を買って・・・」
そう言うと、彼女は特に意識したわけではないが、思い詰めたような顔で自分よりも背の高いを見上げた。
知らないのは彼女だけだが、この見上げるように相手を見つめる時のの姿はそれはもう可愛らしい。
そんな彼女を見て嫌だと言う人が果たしているのだろうか。
無論、彼女にぞっこんのが嫌だと言えるはずはなかった。
こうして仕方なく、というか当然の成り行きでは新しい防具を買うことになった。
この場面を何のためか影からこっそりと眺めていたヤンガスたちは、そのの見せた表情に見惚れていた。
「のあの視線は私だって嫌とは言えないわ・・・。だって、あんな顔されてお願いされたら・・・」
「俺もだな。取って食おうとする前にのあのビームにやられるな」
「あっしは、兄貴だったらの嬢ちゃんの願いなら何でも聞き入れると思うんでやんすが・・・」
この場合、ヤンガスの意見が最も的を得ているだろう。
何度も言うようだが、は彼女にぞっこんなのだから、害意や悪意のないお願いだったら、すぐに了承するとまではいかないにしろ、考えるくらいはするに決まっている。
当事者の知らない場所でとんでもない会話がなされている中、防具屋の前では見事にの放ったお願いビームを食らったが新たな鎧を買っていた。
その隣には安心した表情を浮かべたの姿があった。
恐るべし、お願いビーム。
ちなみにこのビームが効果を発揮するのは人間相手だけであり、魔物相手に手応えがあったのはキャプテン・クロウだけであった。
あとがき
ヒロインはゼシカタイプの美人ではありません。どっちかって言うと可愛いタイプですので、セクシービームは放てません。
しかし、ヒロインは決しておねだり上手、と言うわけではありません。滅多におねだりはしませんから。