彼女と別れて早5年。彼と別れて早何年。
かつての幼なじみは今も元気にやっているのだろうか。














Step:10  美少女を探してください
            ~幼なじみっていいよね~












 アスランとの部屋の机の上には唯一の共通点が置かれている。
電子回路やら、メカ系雑誌がどっさりと載っているアスランの机上には、4人の少年少女が写った写真。
こざっぱりと片付いているの机上にも、別のアングルから撮られてはいるが、やはり4人の子ども達の写真。
写真の中の紺髪の2人は幼き日のアスランとである。
そしてもう2人は、それぞれ茶色の髪をした、優しそうな顔の少女達である。
アスランの部屋へ書類を届けに来たディアッカは、偶然この写真を見つけた。
手にしていた書類の束をぼとりと落とし、代わりに写真を手中に収める。
そしていつものごとく、例の溜り場へと駆け出して行った。






























 「、アスラン!!なぁ、こいつら誰っ!?」


「うるさいぞディアッカ。」









大声で今ここにいない人物を呼ばわる彼に、イザークが容赦なく言葉を突き刺す。
しかしそんな事今更言われても、と開き直るようになったディアッカは見ろ、と言わんばかりに写真と突きつける。










「そこに写ってんの誰だかわかるか? 可愛いだろ、この子達!!」








写真の中で自分に向かってにっこりと微笑んでいる少年達。歳は10歳かそこらだろうか。
あどけない顔つきをしてはいたが、イザークには彼らに充分見覚えがあった。
そうだろう、毎日毎日顔を突き合わせている同僚達なのだから。








「ふん、ただの昔の写真じゃないか。可愛いもきれいもあるか。」





あまり興味を示さなかったイザークにがっかりとなりながらも、ディアッカはようやく現れたアスランとに写真を見せた。
アスランは彼の手にしている写真が自分の机の上にあったものだと知り、眉をしかめる。











「わー懐かしいー。これアスランの? やっぱり可愛いわね~。」

「それ! そのって子!! その子ってどっち?
 まぁどっちにしたってすっげー可愛いんだけど!!」




「「は?」」









妙に勢い込んで尋ねてきたディアッカに2人は同時に非難の目を向けた。
はどこ見てんのと言い、アスランにはなんだかんだ言って、女を見る目がない、などと言われる始末だ。












「・・・こっちが。でもってこの私の隣にいるのがキラ。
 正真正銘男よ。女の子に見えなくもないんだけどね。」









この空間を一筋の冷たい空気が通り過ぎていった。




















































 「いい?私とアスラン、それからこの中のとキラは幼なじみよ。」




「キラってあのストライクのキラ・ヤマトですか?」






ニコルの問いに無言で頷く。彼女の隣ではアスランが辛そうに顔をうつむけている。
同じ幼なじみでも、この強さの違いは一体なんなんだろうか、とイザーク達は疑問に感じる。
これではまるでアスランが女々しすぎるのだ。





キラ・ヤマト。クルーゼ隊に所属していた彼らの同僚、あるいは先輩といった優秀なパイロット達を、
その驚異的な強さで葬った地球連合軍のパイロット。
いくらかつての幼なじみと言えども今は敵である。
戦場でだって、何度も顔を合わせたし、一対一の戦いもした。
強い、と素直に思った。











「彼の事はよ~く知ってるでしょ。よく戦闘を挑んでらっしゃる方もおられるようだし。」







はそう言うと、ちらりとイザークに視線を送った。
生来の負けず嫌いな性格からか、イザークは少々無茶をしながらでも何かとストライクに接近しようとするのだ。
含みのある言い方にむっとしたイザークがに言い返そうとする。
が、その前にが言葉を続けた。ちなみにアスランは顔をうつむけたままだ。
















「まあいいのよ、死ななきゃそれはそれで。
 誰かが死んで、それで私みたいに人員補充みたいな感じで新人が来るのはもうこりごりでしょ?」






彼女の言葉に4人は黙り込んだ。が入隊した当初は、確かに戦死した彼らの埋め合わせ、という気もしていた。
しかし今では、もきちんとクルーゼ隊の一員だった。
いなくなってもらってはこっちが今度は困るのだ。














「大丈夫だって。いくらイザークでもそんなヘマはしないって。
 こいつ一応これでもアスランが来るまではエースパイロットの肩書き持ってたんだぜ?
 ていうか、それよりか俺はこっちの子が気になるな~みたいな。」











イザークのかつての栄光を軽いかんじでスルーして、ディアッカは思い切り彼の好みの話題へと強引に変えた。
彼が指差したのは、アスランとキラの間でに負けず劣らず可愛らしい、濃いめの茶髪に黒目の少女だった。
アスランはこの時になってようやく顔を上げ、柔らかくか、と呟いた。














「どんな方なんですか、彼女は。今はどちらにおられるんですか?」







ニコルが興味津々といった感じでアスランに尋ねる。
そう、ここには女性の割合が低すぎて、のような女性パイロットなどはいないに等しい生活を送っているのだ。
のような、昔の話だとしても、可愛らしい少女の笑顔が見れることは大きな癒しとなる。










は俺達よりも1つ下で、今は15歳かな。でもが10歳・・・、
 この写真が撮られたすぐ後ぐらいに彼女の両親が相次いで病気で死んで・・・。
 それから身寄りがなくなったはすぐにどこかに連れてかれてしまったんだ。」





「今どこにいるのかは行方不明。ずっと探してんのに見つかんないの。
 て言うか、私もあっちこっち慣れないハッキングとかやってみてプラント中の住民票とか見てんだけどね~、
 いないのよね、そんな名前の子。どっかで生きてるだろうけどね、プラントにはいないってこと。」













明らかな違法行為をやっているとの自覚からか、はしゃあしゃあと何も悪びれることなく言っている。
そして、あんな可愛い子が死んでる訳がない、と言い張るに4人は苦笑した。
苦笑したけれども、彼らはの心境がわかった気がした。
信じていたいのだ。いつか、どこかで会える事を。
それがどんな形でかはわからないが、笑い合える日がやって来ることを。











「お前も案外けなげなところがあるんだな。ただのがさつな女かと思っていたら。」


「はい? もっかい言ってごらんなさい? 打ちのめすわよ。」









仲が進展したのかそうでないのか、相変わらず懲りずに憎まれ口を叩くイザークに、
はおそらくそこに彼女の得物があるのだろう、腰の辺りに手をあてた。
冗談が冗談になっていないし、銃やら機体やらを扱う現役軍人がそれをやるとかなり心臓に悪い。
ことにイザークとのような、これで婚姻統制の難関はパスできたのだろうか、
と疑われるような相性の悪い2人がやるとなおさらだ。
小さく火花を散らした2人をあえて無視してディアッカがうきうきと楽しそうにアスランに尋ねた。













「もしさ、このちゃんを俺が最初に見つけたらさ、即行で口説いてもいいよな。
 きっと今も相当な美少女だろうしさ。それに・・・・・・・・・・・・。」






なおもくだらない事を言い続けようとするディアッカの身体が前にかしいだ。
茶色の金髪が降って来ると悟ったアスランが2、3歩横へ退く。
視界の隅でニコルが瞳を輝かせて、さすが、僕初めて見ましたー、と
のほほんと言いながら黒オーラを発しているのが見えた。















、いくらなんでもここで奴を突くな。
 あれはかなりきつそうだぞ。」

「平気よ。手加減してるんだから、部屋に戻って湿布でも貼ってあげたら充分。
 大体にそんな邪な思いを抱く方が悪い。」



「誰が湿布なんぞ貼るか。奴が悪い。」












の背中に話しかけるイザークと、振り向く事もせず淡々と答える
2人の前には床に倒れ伏した邪な男、ディアッカが、




の棒術・・・・・・・・、グゥレイトゥ・・・!!」


とうめいている。
アスランはそんなどうでもいい光景を眺め、彼もまたいつか、とキラの2人の幼なじみと自分達が、
あの写真の中の4人のように素直に、心から笑えるといいと願っていた。











































 「あー、このくらいなら全治3日ね。大丈夫、バスターには乗れそうよ。
 感謝しなさいよ~、湿布を貼ってくれる女の子がいないディアッカに、こうやって献身的に湿布貼ってんだから~。」




数時間後、イザーク・ディアッカ共同部屋にて、がディアッカにかなり辛辣な言葉を吐きながら、背中に湿布を貼っていた。








「ディアッカ骨太そうだしね~。
 イザークだったらもうちょっと日数かかるかもしれないけど、ラッキーだったわね。」


「どこがラッキーなのかわかんねぇよ・・・。
 あーそこそこ、もちょっと上。、そこぐっと押して。」





「・・・私はマッサージ機じゃないんだけど。」






ああだこうだとうるさくも笑っていたを、イザークは心底迷惑そうな顔で見つめて、もとい睨みつけていた。








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