互いにギリギリの戦いを続けているから、今までは出そうとも思っていなかった新たな必殺技や化身が次々と現れる。
化身がいつから生まれるようになったのか詳しくはわからないが、サッカー少年たちは着実に肉体の進化を遂げているのだと思う。
化身はおろか、必殺技すらなかった頃におそらくは初めて必殺技を使う戦いをした円堂大介たち雷門イレブン。
必殺技が当たり前のように使われ、一部の者がマジンを使いこなすようになった自分たちの世代。
そして、より明確に化身を操ることができるようになった神童や松風たち。
マジンよりも強力な力を持つ化身を操る神童たちは紛れもなく新世代のサッカー選手だ。
中でも、松風のように化身を進化させることに成功した者は特に希少な存在だと思う。
化身使いたちの力と、それを持たない者たちとの力の差は歴然だ。
化身使いたちを集め教育するフィフスセクターの狙いは未だにすべては見えてこない。
彼らを集め競わせることで、サッカー界を大きく変えようとしているのかもしれない。
しかし既にもう変わっているのだ。
革命や何やと騒がずとも、化身を操る者が生まれ彼らが戦うことによって既にサッカー界は変革を成している、
変かは誰にも止められない。
複数の化身を合体させ、力を送り新たな必殺技を放つ今の中学生の戦いにはついていけない。
それでいいのだと思う。
変わった世界で活躍するのは新しい人々で、流れに逆らう必要はない。
何が出ようがどう変わろうが、楽しくサッカーボールを蹴ることができるのであれば形はどうだって構わない。
円堂は激しい音を立てぶつかり合う両チームの巨大な合体化身を見上げ、すごいよなと感嘆の声を上げた。
「俺らの頃のサッカーじゃないけど、これもサッカーだ」
「ああ、サッカーだ。どうする、俺たちの後輩に化身使いたちが入団したら」
「困っちゃうけど仕方ないよなあ。はどうする?」
「相手が誰だろうがベースはサッカーなんだから今までと一緒。実際京介くんにも特別なことさせてないし」
「そう簡単に言うけど難しいぞ、人を教えるというのは」
「有人さんだって立派に監督やってたじゃん。京介くんもきついって褒めてたよ」
「それは褒められているのか・・・?」
「喜んどけよ、鬼道クン。ま、俺はちゃんは多少時代が変わってもやってけると思ってるけどな」
「あっきー、それどういうこと?」
「ちゃんは自分じゃ気付いてないんだろうけど相当時代の流れに乗っかってるどころか先進んでるからな。そりゃフィフスセクターも警戒するこった」
「・・・ああ、わかった」
やはりは正しかった。
の祈りはきちんと届いていた。
当たり前だ、昔からしか見えておらず彼女が不安だから何くれとなくお小言を浴びせ続けていた豪炎寺が、今更手のひらを返したように冷酷になるわけがなかった。
冷たくなれるわけがない。
彼はいつだって常にの安全を最優先に考え、どんな手段を使ってでもそれを成し遂げようとしている。
相変わらずわかりやすいけどわかりにくくて不器用な奴だ、お前に誤解されっぱなしだぞ?
風丸はVIP観覧席のイシドを見上げると少しだけ口元を緩めた。
やり口は気に入らないが、敵の中にいるを守ることができるのは敵の中にいる者だけだ。
安心しろ豪炎寺、お前がいよいよ危なくなったら俺たちが外からを助けに来るからな。
気のせいだろうか、ここから表情を窺うことができないのにイシドが笑い返した気がした。
うわーすっごく傷だらけ、実はこんなに怪我してたのねもーみんな頑張りすぎー。
ゼロとの激戦を同点で引き分け、互いの奮戦を称え合いスタジアムの外へ出た剣城たちを出迎えたがきゃあと悲鳴を上げる。
どうにかしたいけど絆創膏持ってきてないから我慢してねと、あっさりと放置を言い渡すの行動にどこから突っ込めばいいのかわからない。
緊張の糸が切れ体中を痛みが襲いだした剣城は、痛みを堪えどうにか口を開いた。
「さんは大丈夫なんですか?」
「へ? 大丈夫って何が?」
「牢の中にいたじゃないですか。平気だったんですか」
「うん、監禁プレイには慣れてるからあのくらいどうってこと。風丸くんたちが助けてくれるってわかってたから、むしろどうやって助けてくれるのかわくわくしてたくらい」
「・・・・・・」
「ん? もしかして心配してくれてた?」
「心配して損しました。俺は、いつもあなたのことを思ったら思った直後に後悔しています」
「そうなの? ごめんね、じゃあ次は期待に応えるからどんどん私のこと考えてねー」
嫌だ、このまま思い続けたら駄目になる。
剣城はのあっけらかんとした対応に深くため息を吐くと、改めて塔を顧みた。
一歩間違えれば自分もここに収容され、白竜たちのように力しか求めることのできないサッカー人間になっていた。
何が白竜との違いを生み出したのかは今となってはわからないが、白竜もきっとこれからは純粋にサッカーを楽しむようになると思う。
次に会う時こそ本当のライバルとしてボールを奪い合いたい。
そしてその時は今日の決着をつけるのだ。
「京介くん、ここ来てからますます男前になったかも」
「特訓の成果かもしれません。吹雪さんに習ったんです」
「ああやっぱり。神童くんは風丸くんに習ってたんだろうなあって見ててわかったよ」
「・・・さんは本当に何者なんですか」
「だからぁ、一つ屋根の下に住んでる綺麗なお姉さんって京介くん自分でも言ってたじゃーん」
お家帰ったらあっつあつのお風呂沸かしてハンバーグ作ろ、帰りにお肉買って帰らなくちゃ。
今日は疲れてるだろうから家に来たらどうだ、色々と聞きたい話もある。
わあ、そんなこと言ったら有人さんち子どもでいっぱいになっちゃうよー。
だけに向けて言ったはずが松風たち全員に発した者と捉えられたらしく、ありがとうございますと口々に歓喜の言葉が飛び交う。
予定が違う、対象者がまるで違う、失敗した。
ずーんと落ち込む鬼道を円堂たちが心底気の毒そうな顔で見守る中、不動だけがけらけらと笑い転げる。
非常に腹立たしい、自分に一番腹が立つ。
「有人さん有人さん」
「・・・何だ」
「この後は無理だけど後でちゃぁんとお邪魔するから、ね?」
「当然だ。なぜここについてきたのかから少し言いたいことがあるからな」
「うっそマジでそこから!?」
やっぱ行くのやめよっかなー、私も風丸くんと一緒にここに残るー。
駄目だよ、は向こうでやることあるんだからまずはそこで頑張ろう。
別れと応援のハグを風丸から受けたがしょんぼりしながら頷く。
非常にもやもやする、相手が風丸だと言い聞かせてももやもやが止まらない。
日本に帰ったら、今度はこちらがを連れ去ってしまおう。
鬼道はひらひらと大きく手を振りゴッドエデンに残る円堂たちに別れを告げるの背中を見つめ、心に決めた。
「こないだのゴッドエデン戦のVTRちょうだい」「なぜだ」「風丸くんシーンの編集したいからに決まってんじゃん」