ムカつく顔して笑う君




よく言えば普通
悪く言えば中途半端
そんな雷門サッカー部の空気のような(存在が薄い的な意味で)男の、本当の性格など誰が想像できるだろうか
いつもヘラヘラと笑みを浮かべ、熱くなりやすいこの男の冷たい目
いつぞやの宇宙人騒ぎを思い出させるような空気に汗が伝う

「なぁ」

一歩彼が踏み出す
その様子に寒気を覚えながらも体を動かそうと奮闘してみる
足はまさにそこに縫い付けられてしまったようにピタリとくっついていて動いてくれない
彼の冷たい目は私を射るように見ている
目をそらしてしまいたい
それすらもできない自分
ひどく緩やかに時が流れる
一歩一歩縮まる距離
ひどくゆっくりなその行為は私の恐怖心を煽る

「さっきの、何」

さっきのとはなんだろうか
頭を巡らすも思い付かない
いつのまにか彼は目の前に来ていて、ぐ、と私の手を掴む
痛い
口から零れた言葉に彼は嗤う

「ずいぶんと楽しそうだったけど?仲、いいのかよ?」

にこりと彼は優しく笑う
それがさらに私の恐怖心を煽るのだと彼はわかっているのだろう
肩に手が触れた

「松野とどういう関係?」

名前には俺がいるよね?
なんて笑っているくせに目が笑っていない
呼び方が、声が、彼が怒っていることを告げる
いや、そんなもの最初の空気でわかるが
友達だといっても彼の目は納得していない
そもそもだ、松野と盛り上がっていた話の中心は真一な訳であって、こんな風に攻められる義理はないと言うか…
こんな状況に何度も陥るのにやっぱり好きだとかバカみたいに笑っていってからかわれていたわけで、だからといってそれを言えるはずもないのでグッと飲み込む
恋は落ちたほうが負けと言うけれどもなんだかちょっと素直に言うのが悔しい
とはいえこの痛みを伴う彼の愛は私にはハードだ
もうちょっと優しくしてほしい
いや、普段は優しいのだけど今みたいに嫉妬心全開だと辛い
いや、彼の愛をダイレクトに受け止められて嬉しいは嬉しいのだけど
いや、私は断じてMではない

「真一、痛い」
「あぁ、ごめん」

笑って謝るくせに手を掴む力は緩まない
スッともう片方の手が私の頬へとのびてきた
するりと頬を撫ぜられてくすぐったい
不意に真一の顔が近くなる

、すきだよ…だから」

俺だけを見てろよ
唇の触れそうな位置で彼は笑う
そしてそのまま唇が重なる
回りから聞きなれた声が響く
悲鳴にも似た声
怖くて視線をそちらに向けられない
「半田先輩と先輩がー!」
なんて聞こえてきた
おいいつの間にギャラリーが集まった
慌てて離れれば真一は笑う
ちょっと待てもしやこれは計算だったのだろうか
慌ててその場から逃げようとしたら真一に腕を掴まれた

「どこいくんだよ」
「かっ、かえる!」
「部活サボんのかよ?」
「ぅぐ…」

今すぐここから逃げたい私の気持ちなどわかっているだろうに楽しそうに笑うこいつがムカつく
だからといって部活をサボる勇気もない私だ
真一の楽しそうな顔がまた怒りを煽る





ムカつく顔して笑う君





いっそ顔面に拳を叩きつけてやりたい
こんな奴だというのに好きだというのがまた更にムカつく








一方的に某方へ誕プレで捧げます




紫苑さんはたぶん私のドッペルゲンガーさんです。
制汗剤の香りの好みが違うという点以外は、イザーク好きでヤンデレ好きでなにやら大体お話合います。
いいですよね、こんな半田もすごくいいと思います・・・!
爽やかシトラスミントの香りを漂わせる半田も好青年でいいと思いますが、爽やかさの裏にこういう牙を隠し持っていても素敵です。
俗にいう、鬼畜半田です。月華の半田とは一味もふた味も違いますが、あえて言おう。こういう半田も好きだ。




そして、懲りずに書いたその続き  その笑顔、陰謀につき



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