あとがき
凌統夢連載『月夜に恋して』、これにて終了です。
今作は第1弾『公主様の秘め事』で想いを通わせながらも立場の都合から別れざるを得なかった2人の、その後のお話でした。
許昌での孫策軍急襲の時からそれなりの時間が経過したけれども、お互い、愛する人の事は忘れていなかったのです。
逢いたい、話したいけれどもどうすればいいのだろう。
まだ自分のことを覚えているのか、想ってくれているのか不安だ。
お互いが同じ不安や願いを抱えながらようやく再会できたのは、あの日必ず迎えに来ると誓い別れた時と同じ、戦場でした。
仕える主も生きる場所も違う2人が唯一で会えそうな場所は、そこしかなかったのです。
タイトルの『月夜に恋して』は、月って古来不思議な力を持つとか言われているので、月が見える夜に出逢えて仲を深めることができたって思ったら、
なんだかロマンチックだよねと思ったことからです。
満月の夜になったら凌統が狼になるとか、そういった意味ではないです、たぶん。
それはそれで楽しそうだ、なんでそれにしなかったんだろうとか思ってない、きっと。次はそれでいこうとか考えてない、今のところ。
第2弾では少し2人の周辺も変わっており、ヒロインには彼女が与り知らぬところで縁談話が進んでいました。
世間一般で言われる姫君とはかなり毛色の違ったヒロインですが、彼女のような女性を好ましく思う人も当然いるわけなのです。
それが張遼だったわけなのですが、張遼は本気で彼女のことを愛していたと思います。
主の娘を娶っていいという建前上ヒロインを選んだけれども、そうでなくても曹操様に直談判していたかもしれません。
ヒロインには全く相手にされていませんでしたが。
彼女は鈍感なわけではないのです。ただ、まずありえないという前提上張遼に接しているから、彼の気持ちなど知ろうともしなかっただけなのです。
張遼を母親のようだと言ってしまうのはヒロインだけだと思います。
後世に赤壁の大戦と呼ばれる戦いで2人が再会し、凌統がヒロインを連れ帰るというのは初めから考えていました。
凌統は最初は己の行動にはそれほど疑問を抱いていなかったと思います。
ただ、現実は彼が考えていたよりも遥かに重く厳しいもので、一緒にいたいからという理由だけでは生かすことができません。
どう考えてもそうです。捕虜として囚われた敵国の姫君が辿る道なんて、見せしめに殺されるか、恥辱の限りを尽くされるか、死ななくても奴隷同然の生活を強いられるあたりだと思います。
どの道を歩んでも幸せになれることはないと思います。曹丕兄上と甄姫の例なんて例外中の例外です。
あるいは凌統も、初めから開き直って『この子は俺の嫁にするから!』とでも宣言しておけば良かったのでしょうか。
そこまでできない我が家の凌統です。そんなことを宣言しても、彼女が曹操の血を引いている時点で無理だったと思います。
陸遜がぶちまけた『彼女は我が一族の血を引いている』は、本当のことかもしれないし、窮地の友人凌統を救うためのはったりだったかもしれません。
この件は後ほど話に絡ませるつもりは毛頭ありませんので、陸遜とは本当に他人だと思って下さって構いません。
事実がどちらであっても、彼が保護者になったことは特別悪いことにはならないと思います。
張遼よりも陸遜の方が不憫な目に遭っていると私は思います。
でも彼のような場の空気をかき混ぜる役の人は欠かせないので、これからも活躍していただこうと思っています。
凌統夢のはずなのに全然凌統と仲良くなれなくて幸せになれなくて、途中まで張遼夢なんじゃないかとか書いてる側も感じてきたりして、
いちゃつきだすまでに実に最終話までかかって申し訳ありませんでした。
書いているうちに、どの段階になったら幸せになれるのかわからなくなってきて、先延ばしにし続けていたらいつの間にか最終話迎えていました。
糖度が12話までは0%どころかマイナス値叩き出してるくらいで、13話に入ってようやく10%くらい出してきて、最終話で一気に100%にしたつもりです。
本夫(公主様シリーズの元ネタでヒロインが添い遂げてた相手の男性)に負けないように、負けないように、ここで凌統を正夫に据えるんだ!
そんな熱意が暴走してしまったのか、最終話は書いてる私が恥ずかしくなりました。
これが趙雲とかでしたらここまで甘くはならないんでしょうが、なんていったって凌統です。
私の彼に対する第一印象は、『女慣れしてそうなエロそうなお兄さん』です。
第一印象を前面に押し出したらこうなりました。後悔はしてない。
2人の年月的にも物語の話数的にも、長い時間かけてようやく普通の恋人(とは程遠い気もするけど)らしく甘い雰囲気を作り出せるようになったので、
これからは存分に2人を幸せにさせてあげたいなと思います。
辛い経験して辛い別れして辛い言葉浴びせられてと、辛いだらけの日々を送ってきたから、今度こそ幸せになってね。
それでは、凌統夢連載『公主様の秘め事』を最後までお読みいただきありがとうございました。
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