ファニーなハニーのバニー鍋
今日はご馳走ですねと、手を休めることなく鍋をかき混ぜている部下を見つめる。
筆架叉を愛用している割には、その手つきは豪快だ。
巨漢の猛将しかひと呑みにできないのではないかというざっくりと切り裂かれた肉の塊の煮込む具合を確認していたは、顔を上げると小さく笑みを浮かべた。
「賈ク様は濃い味がお好きですか?」
「薄めにしてくれ。にしてもそれはいったい誰の仕込みだ? 見た目にそぐわぬ結構な手際なことで」
「夏侯惇様、曹仁様、満寵様にそれからええと」
「ああわかったわかった、いかにもな御仁だ」
人によっては頭を抱え、ともすればお小言の二言三言はもらっていたであろう炊事の腕だ。
幼い頃から野営に親しみ娘としての躾をされなければ、こう育ってしまうのか。
なるほど確かに生前の荀彧らが悔恨の極みといった表情を浮かべていたわけだ。
こちらとて、彼女に恋情を抱いていなければ顔に貼り付けただけの薄っぺらい乾いた笑みを浮かべていただろう。
嫁の貰い手があるまいと呟いていたかもしれない。
現に、この状況を見ては手を上げる勇者は格段に減るだろう。
さすがは愛する部下だ、上官の心情を無意識化に理解し夫の候補を削いでいる。
この働きに報いるには彼女の夫になるしかない。
「できました。弓の鍛錬も積んでおくものですね、今日は兎鍋です」
「さすがはよくできた俺の副官殿だ。それで、あんたはこれをどうやって食べるつもりだ?」
「噛り付く以外の方法があるとでも?」
「いい答えだ。それでこそ俺の首を取る女だ」
「賈ク様?」
お話に夢中のお口に、夕餉が入る隙はありますまい?
そう言ってここぞとばかりに自分の椀に肉ばかり盛り始めたの腕を、賈クは慌てて取り押さえた。
意外と絶品と評判だとか