赤と緑の森の人
「なんか、変わった人よね・・・。」
ヤンガスの故郷、パルミドへの道の途中、達はとんでもない館と人に出会った。
はじめて見る人種というか、タイプの人で、全身を赤やら緑やらの原色の色での服を着ていた。
なんかはそのあまりの奇怪さに目をまん丸にしたまま硬直していた。
少々心臓に悪かったのかもしれない。
が、当の奇怪な人間――――、モリーと名乗った彼はそんな事なんら気にする事もなく、
さっさと自分の用件を述べてしまった。
話を聞いて、しかも一方的にモリーのメモとか言う怪しげなメモを受け取ってしまったのだから、
今更この彼の願いを反故にするわけにはいかなかった。
達は約束を破るほど冷徹な人間ではないのだ。
そして、彼に出会ってしまった事から更なる混乱が起こる。
「、ああいう人はどう?
好みとか言ったら私・・・。」
「あ、あの人?あのモリーさんとか言う?
モリーさんにあの服は良く似合ってたと思うな。
あの人にしかあんな服は似合わないよ。」
ゼシカとはモリー談義に花を咲かせている。
何の話をしているのかここからはよく分からないが、
は予想とはちょっと違った答えを発しているらしい。
その疑惑を聞いて不安に陥る男がここに2名いた。
とククールである。
といっても、ククールの方は苦笑しているだけだが、に至っては、顔面蒼白の有様である。
きっと彼のことだ。大好きなの好みの男性のタイプを勘違いしているのだろう。
「ね、もそう思うでしょ?」
突然がに話を振ってきた。
放心していたは彼女の声にはっと我に返る。
「な、なにっ!?」
「どうしたの?そんなに私、びっくりさせちゃったかな。
ごめんね。」
想定外のの反応に罪悪感を感じたは、しゅんとうつむき加減に謝る。
「い、いや?なに、どうかした?」
「あのね、モリーさんの着ている服は、
モリーさんにしか似合わないよねって話。
だって、あの服を他の人が着ても、絶対にばっちりこないんだもん。
そう思わない?」
の言う事はもっともだった。
仮に自分自身があのモリーの服を身につけたところで、きっと似合わない、
というかこの世の終わりとか叫ばれそうな勢いである。
それはククールにしても同じ事である。
いくら赤い騎士団の特注の服を着けているとはいえ、
あの顔だけは無駄に良い彼がモリーの服をつけたとしても、似合わない事は必定だろう。
ヤンガスなどにはもちろん論外である。
・・・トロデ王なら色といい合うかもしれない、と彼が心の中で思ったのは口には出さない事にしておく。
「そうだね。でもなんでいきなりそんな事思ったの?
まさか、あんな人が好きなの・・・?」
「えぇ?何言ってるの、もうったら。
冗談にしても性質が悪いよ?
私はね、には赤とか緑とかじゃなくて、今着てるみたいな山吹色とか、
茶色とかが良く似合うなぁって思ったの。
の髪の色と、瞳の色にばっちりでねっ!」
なんでもはゼシカとモリーの服について話していたらしいが、
そこでふとの服装について考えてみたらしい。
さらに彼女が付け加えて言う事には、みんなセンスが良くて、すごく綺麗、という事だった。
あのヤンガスですらその褒めようなのだから、他の仲間達がどれだけ綺麗に見えているのか、
はの目を疑いたくなった。
は改めてを眺めてみた。
美しい真っ黒な髪を2つに結い、生き生きとしているその瞳もまた闇の色である。
しかしその闇は暗いものではなく、中に光り輝くもののある、夜空のよう。
薄緑色の動きやすそうな膝丈のワンピースは彼女の雰囲気とよく合っている。
だって充分センス良いじゃないか、とは思った。
そしてそれを口に出して言ってしまう。
「だってさ、充分可愛いよ。
その服、僕は大好きだな。」
「え・・・・。」
しかも少し本心というか、可愛いなどと言ってしまう。
事実そうなのだからかまやしないのだが。
目の前で頬を赤くしてまたうつむいてしまったは、それよりも何倍か可愛かった。
(まずい。アスカンタのあの時といい、僕は暇さえあれば、のこと、
可愛い可愛いってずっと思ってる。やっぱ好きなのかな、彼女の事。)
緑の森の中に、それぞれ顔を赤くした少年少女がいた。
「・・・微笑ましいというか、見ててイライラするわね、あの2人。
特になんかあそこまで言ったんなら後ちょっとなのに。」
「そうそう。早くしないと俺がを貰うぜ?」
「あんたはそんな事しなくてよろしい。
ヤンガス、これ以上ここでは進展なさそうだから、
適当な時にあの2人呼んで来て。」
「あっしはパシリでがすか・・・。」
草の陰には野次馬根性旺盛な若者と、年齢不詳の山賊風情がいた。
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