迷える少女 4
ドルマゲスは笑っていた。
そして笑うことにも飽きたのだろうか、不意に満月の方へ身体を向けると、窓を突き破り外に消えていった。
残されたたちの目にはいったい何が映ったのだろうか。
旅人たちのリーダーの名前はといった。
彼はが旅に出ようと思っていると知ると、一緒に旅をしないかと彼女を誘ってきた。
はこの場所に留まることはできなかった。
オディロ院長が亡くなり、忌まわしい事件もあって修道院の人々の間でも、彼女の存在はあまりにも大きくなっていた。
それに彼女にしてももうこの地に残ろうという意思はなかった。
彼女もまた、たちと同じようにドルマゲスを追いかける旅がしたかったのだ。
こうして、は彼らの旅について行くことになった。
小屋の荷造りも済んだある日、彼女の家に聖堂騎士団員の1人が現れた。
マルチェロの使いだと名乗ったその者は、彼女に修道院に来るようにと伝えただけで帰って行った。
いったいなぜ自分が呼ばれるのかもわからない彼女だったが、呼ばれた以上、行くことにした。
それににとってこの修道院に真正面から日中堂々と入っていくのは、これが初めてだったのである。
マルチェロの部屋に行くと、そこにはたちとマルチェロを兄と言っていた銀髪の青年がいた。
彼女が部屋に入った頃には既に彼らへの話は終わっていたようで、ククールと呼ばれた青年が不貞腐れたように部屋を出て行った。
誰もいなくなり、部屋にとマルチェロの2人だけが取り残された時、マルチェロは不意に話し出した。
その声はまるで独り言のようだった。
「私がお前に教えた呪文は全て初歩中の初歩ばかりだ。私がお前に強力な呪文を教えなかったのは、お前の力を測りかねたからだ。
お前の魔力がどれほどのものなのか、私にはわからない。わかろうとも思わない。
だが、順序を弁えるのだ。自分の力を過信してはならない」
「マルチェロさん、私・・・。」
「私は少なくともお前を助けたことを不運だったとは思っていない。お前のおかげで今こうして立っていられるのだからな。
・・・もう、自分の居場所を失くすんじゃない。ここはお前の故郷だ。辛い時があれば、いつでも戻ってこい。
あの旅人どもの元にいるのが耐えられなくなったら、どんな時でもこの修道院はお前のために門を開くだろう。
そして私は・・・、、お前のために無事を祈ろう」
そう言うと彼は背を向けた。
もう、言い残したことはないようだった。
はぺこりとお辞儀をすると、にっこりと笑って言った。
「私、マルチェロさんが私のことって呼んでくれたの初めて聞きました。
マルチェロさん、私、ドルゲマスを追います。そして、いつか必ず、オディロ院長や他の殺された人々の思いを晴らしたいです。
・・・マルチェロさんもお元気で」
の新しい旅が始まった。
彼女の隣には、旅人たちがいた。
「・・・というわけなの。」
私はたちにマルチェロさんとの経緯を話し終わった。
みんなは私が話している間、一言も口を挟まず、ずっと話を聞いてくれた。
私が話したことは全部本当の事、真実。偽りなんてない。
彼が私を助けてくれなかったら、きっと今の私は存在し得ないだろうから。
あれ以来マイエラ修道院の門を潜ったことはない。
行く必要がないっていうのもあるけど、悲惨な事件の現場に行く気も起こらなかったからだろうと思う。
私はあの事を後悔していない。
マルチェロさんに出会わなかったら、今たちと旅をすることもできなかったのだ。
そして、もしも私が彼と出会わず、旅に出ることもなかったなら、私が大好きな人と一緒にいることもできなかった。
人と出会うということは同時に別れも意味している。
出会いと別れは背中合わせ。
きっと、いやもちろんたちと別れる日だって遠くない日にやって来るだろう。
それでも私は、今を過ごしたい。
たくさんの人に支えられて、今という二度と来ることのない時を過ごしたい。
大切だと心から思っている人と一緒に・・・。
「私は旅に出た事後悔してないよ? だってこうしてみんなといることができるから。」
あとがき
ようやく完結しましたマルチェロ夢。これないと、たぶんどうして出会ったのかわかりにくいと思ったので補足です。
ククールは旅に出る瞬間まで、彼女の存在を知りませんでした。
それにしても、あの廃屋はちょっと片付けたくらいじゃ人住めないよね。