最近、に観戦仲間ができたらしい。
毎試合観に行く物好きの女の子なんていませんと文句たらたらで1人観戦を決め込んでいたが、何の気まぐれか相方を見つけた。
しかも相方は男で、元不審者現ファンだという。
修也のファンだから何かあったら修也のせいねとさも当然のように責任転嫁宣言をしてきただが、責任転嫁されてもそうでなくてもあまり面白くない。
自分のファンだというのは建前にすぎず、実のところはの整った表皮に惑わされあわよくばと企む下心満載の男かもしれない。
がどんな男と付き合おうがそれはの勝手だから口出しはしないが、ろくでもない男は選ぶなとは幼なじみとして忠告しておかなければ。
豪炎寺はいつの間にやら愚痴の処理場と化した半田を相手にへのクレームをぶちまけていた。





「豪炎寺、口出しと忠告って一緒と思うんだけど」
「口出しは干渉で忠告はアドバイスだから違う」
「いや、にあれこれ言う時点で忠告も立派な口出し行為だよ。・・・別にやらしい意味で言ってんじゃないんだから今にも俺を殴りそうな目で見るな!」
「・・・気のせいだ。大体、に合わせられる奴なんていないんだ。に気に入られたいのか、俺はその男が無理をしているんじゃないかと思って心配しているだけだ」
「はいはい、が他の男に取られたみたいで面白くないんだろ。・・・面倒な奴」
「何か言ったか?」
「いいや何も。てか、はそいつだけじゃなくて他の男ともつるんでんじゃん。風丸とかどうするんだよ。俺だってと仲良いって自覚あるし」
「風丸はいいんだ。風丸は邪気がないし風丸だからな。半田もいい。はお前を男とは思っていない」






 何だろう、今ものすごく聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
生物学上はれっきとした男である自分を男とは思っていないとは、ではにとって半田真一とは何なのだ。
男女の性差を超越した存在ではないと思う。
むしろそれに当てはまるのは風丸だ。
男とは思っていなくてもちろん女でもなくて、もしかして性別以前に子分、下僕?
救いようのない仮説に、半田は自身で立てた説ながらぞっとした。
あながち間違ってはいないかもしれないというあたり、恐怖が足音を立てこちらへ歩み寄っているかのような錯覚を覚える。
豪炎寺はそんなことはどうでもいいと半田の悩みを斬って捨てると、気に喰わないと言い捨てた。






「怒るか心配するかやきもち妬くか、どれか1つにしろよ」
「そんな餅は焼かない」





 相談を持ち込むのは百歩譲って乗ってやるが、自分で気持ちの整理がついていない愚痴のポイ捨てはやめてほしい。
こちらとしても暇ではないのだ。
今日は風丸くんとデートだから日直の仕事は半田よろしくと日誌をウィンクつきで押しつけ隣のクラスへと駆け込んだのおかげで、雑務が2倍なのだ。
幼なじみの責任は幼なじみが持てと恨みがましい目で豪炎寺を糾弾したが、相手はこういう時だけ赤の他人のただのクラスメイトに戻り否と即答する。
何が俺はさんと関係ないからだ。
さんって何だ、気味悪い呼び方をせずにと呼べばいいのにさんって俺はお前の舅か。
半田はようやく書き終わった日誌を乱暴に閉じると、あくまでも他人のふりをする豪炎寺にぐいと顔を寄せた。





「なあ、の赤の他人でただのクラスメイトの豪炎寺くん。・・・今日のの下着の色、知ってる?」
「・・・・・・上か、下か」
「さあ、どっちがいい?」
「・・・半田」
「あ?」
「最悪だな、半田。よくそれでの友人と名乗れたものだな」
「いや、興味の欠片も持ってないふりしてがっつり食いついてくる豪炎寺の方がよっぽど性質悪いよ」





 ほんとはのこと好きなんじゃねぇの、ほらほら言えよこのむっつりストライカーめ。
幼なじみで手を打つほど俺は落ちぶれてはいない。
あれだけのことしか口にしていなかったくせによくもまあぺらぺらと白を切るものだ。
半田はむすりと不機嫌な表情になった豪炎寺をにやにや笑いながら見つめた。







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