心配するな。
俺とあいつの関係は好調継続中だ。
Data05: 会いたい人
~ただいま宇宙はこんな感じ~
ザフト軍には若き隊長率いるエリート部隊が存在する。
先の大戦で生き残り、英雄と呼ばれ他の兵士達から尊敬の眼差しを浴びている、そんな人が複数人所属している隊こそそれだ。
隊の名前はジュール隊と言う。
隊長イザーク・ジュールは若干19歳。
今をときめく、輝く銀髪も美しい美貌の白服隊長殿である。
ジュール隊長とミネルバ艦長はなぜか面識があるそうだ。
ミネルバで活躍しているアスランもジュール隊長とは同期でしかも同僚だったらしいが、仲の良さについてはノーコメントだ。
そんなある日、ミネルバは突然宇宙へと行く事になった。
新人パイロット達の研修である。
「いきなりですか? しかもジュール隊に?」
「シンはあなたの手に負えないほどでしょ。
ジュール隊長は公正にして厳格。更正にはぴったりだと思うわ。」
グラディス隊所属、シン・アスカ。
彼はミネルバきっての問題児の烙印を押されてしまった。
「、ジュール隊って知ってる?
隊長のイザーク・ジュールって銀髪のすごくかっこいい人なのよー。
しかもヤキンの生き残り。憧れるわー。」
宇宙へと上がる途中、ルナマリアはうきうきとに話しかけていた。
ジュール隊ぐらい知っている。
あの幼なじみ、・がいるのだ。
何年この日を待ったことか。
は嬉しさでいっぱいだった。
「でもヤキンの生き残りはアスランもでしょ?
やっぱりアスランにも憧れる?」
「はっ、どこに憧れるんだよ、あんな人のどこに!!」
いつの間にか話に加わっていたシンが吐き捨てた。
シンはアンチ英雄で有名だったりする。
ルナマリアはシンをぎっと睨みつけると、でもやっぱりーと付け加えた。
「ジュール隊長もかっこいいけどー、同じ女として見ちゃえば・にも憧れちゃうな。
だってあんなに美人でしかも隊のエースパイロットよ。
私ね、ああいう人になりたくてこの制服も改造して・と同じ型にしたのよ。」
「・? 誰それ。」
シンの言葉に目を剥くザフトレッド3人と。
殊にアスランとのショックは大きい。
かたや従妹、かたや幼なじみの存在を、まさかこの少年が知らないとは思いもしなかったのだ。
せめて名前ぐらい覚えておいて欲しいものだ。
はパソコンに収録したに関するデータをそのまま読み上げた。
「・。C.E.56年3月20日生まれ。
クルーゼ隊にザフトレッドとして所属。
当時の搭乗機はリヴァイヴ。ヤキンの生き残りで、通り名は『蒼穹の戦華』。
今はジュール隊所属でエースパイロットの地位にある。
・・・でもって私の幼なじみ。」
そんなすごい人物を知らなかった自分の無知さと、の幼なじみに対する誰それ発言を大いに後悔したシンだった。
所変わって宇宙はボルテール。
つまり今度ミネルバパイロット達が訪れる艦だ。
「・、今すぐ隊長室に来い! ・、今すぐ・・・!!」
艦内に神経質なイザークの声が響き渡る。
はヘッドホンを外すと、隣で一緒に射撃訓練をしている緑色の制服を着た茶色に金髪の青年に苦笑して言った。
「ジュール隊長、今日はご機嫌斜め? いや、今日もかな。」
「とっとと行けよ。怖いならついてってやろうか、嬢?」
「もとよりそのつもり。副官、ついて来てくださる?」
こういうちゃらんぽらんな隊員がいるから、イザークも怒りっぽくなるのだ。
「隊長、お呼びでしょうか。」
「2人の時はイザークと呼べ。・・・なんだ貴様もいたのか。」
明らかにのけ者扱いをされる副官ディアッカ。
この立ち位置に慣れてしまっているのか、そのくらいの言葉を食らってももう気にしていないレベルに達している。
「・を知ってるか?」
「うん、だって大事な幼なじみだし。・・・それが?」
「見つかったぞ。今ミネルバにいるそうだ。今度こっちに来る。」
の表情が固まった。
かと思うと無表情のままイザークの前まで来て、本当と尋ねる。
重々しく頷く彼を見て、はぱあっと顔をほころばせた。
そしてぎゅうっとイザークに抱きつく。
「やったぁっ。え、え、ミネルバっていつ来るんだっけ。
やだ、なんでアスラン教えてくれないの?
生きてたんだ・・・!!」
「新人が来るのは3日後だ。俺もの喜ぶ顔が見れて嬉しいぞ。」
彼女も恋人も婚約者もいない男の前でいちゃつくのはやめてあげてほしい。
「でもまさか、本当にに会えるとは思わなかったなー。
どんな顔して会えばいいんだろ。」
は婚約者の前で真剣に悩んでいた。嬉しそうにかな、それとも優しく笑って?と百面相をしてみる。
「本人に会ってみるまでわからんぞ。
それよりもアスランだ。あいつがまた来る。しかもFAITHだ。」
「またって言うけどね、アスランがこっちに帰ってきたのは、イザークとディアッカがニコルのお墓参りの時になんか言ったからでしょ。
なんで私にも連絡してくれなかったのよ。」
「貴様があの時来ていたら、確かに話は早かったかもしれんな。」
ジュール隊に残る旧クルーゼ隊の3人は、遺骨のない戦友ニコル・アマルフィの墓へよく行く。
ちょっぴり、いやかなり性格黒くて、それでもイザークとの仲を取り持ってくれた、ある意味で天使のような存在だった。
「多くの人の犠牲や悲しみの上で生き残って生活を送っている俺達は幸せ者だな。」
「まぁ、ね。私は早く実家に戻って花嫁修業しなきゃだけど。
あーあ、私も転属したいな、ミネルバに。アスランいるし、いるし。」
相変わらず従兄と幼なじみを心から愛する少女だが、婚約者の存在を忘れてはいけない。
彼は2年前とあまり変わらない、短気で負けず嫌いで、アスランの事をこの上なくライバル視している男なのだから。
「、転属したいのならいつでもさせてやるぞ。
からジュールへお前の戸籍の移動をな。」
にやりと口元を歪めて妖しく微笑み、の華奢な身体を引き寄せようとするイザークに、彼女は馬っ鹿じゃないのと言うと、愛情の欠片も見せずに突き放した。
何年経っても状況をわきまえない少女である。
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