氷天楼にご案内     10







 これ以上は進めませんと情けない悲鳴を上げる御者に、馬車から降りるよう促す。
そして躊躇いもなく御者がいた席へ移動した貴人を、于禁はお待ち下されと慌てて呼び止めた。



「その務めはこの私めが」
「于禁殿を無事に送り届けることが孫呉の使命です。であればわたくしの他に御者はおりますまい」
「いけません! 恐れながら、御身は馬車を操ったことはおありでしょうか。ただ馬を操るのとはまるで違います、大怪我に及ぶことも・・・」
「わたくしの御し方で怪我をなさるおつもりですか?」
「いいえ、決してそのような!」
「では何も憂うことはありますまい。わたくしにも手があるのです。よく燃えそうな馬車で良かった」



 今、何と。
不穏な独り言を問い質す間もなく、馬がいななきを上げ駆け始める。
揺れる揺れる、口を閉じていなければ舌を噛みそうだ。
怪我をしないと誓いを立てたのだから、擦り傷ひとつ作ることは許されない。
御者台の彼女は無事だろうか。
華奢な人だ、まさか振り落とされてはいないだろうかと慌てて窓から覗き込むと、存外しっかりと手綱を握っている。
いったいどういう育ち方をしたのだろう。
軍どころかほぼ単騎なのに、全軍突撃と声を上げている。
それだけで士気が上がるのだから血は争えないといったところか。
馬車が突然止まり、御者台から女性が飛び降りる。
ひらりと舞い上がった裾から覗いた足には、槍で突かれたのか痛々しい裂傷の跡が残っている。
走るどころか歩くことすら難しかったであろう時期を過ごしていた彼女はおそらく、故国の人々が思うよりもずっと壮絶な生き方を孫呉で歩んできたのだろう。
たった数年自分が味わった敗北の屈辱などとは比べるべくもない環境を、彼女は独りで生き抜いてきたのだ。
于禁殿も早く!
そう叫ばれ我に返り慌てて下車した直後、馬車にぶすぶすと大量の矢が突き立つ。
ひえぇと泣き声を上げる者に気付き声の主を顧みると、が泣きじゃくっている。
彼女を庇うように立っている陸遜ももはや気力で立っているというだけで、何の役にも立ちそうにない。
于禁はに走り寄ると無事を確かめた。
矢傷はないが、ここへ連れて来られるまでに一悶着あったのか額には血がこびり付き手足には縄で縛られた跡もある。




殿、無事か!」
「ひぇ、あっ、于禁殿、なんで・・・!? りっ、陸遜殿、あの人が! もうだめ、私を庇って怪我なんて!」
「うむ、多少の怪我は見受けられるが命に別状はない。ここは私が預かるゆえ、疾く退かれよ」
「・・・退がるとは、いったいいかように?」
「陸遜殿、それは」
殿をどこぞの誰かと間違えて、あるいはおびき寄せるための餌として拐したのはそちらでしょうに・・・。あなたもなぜ来ているのですが、馬鹿ですか、馬鹿なのですか」
「控えられよ陸遜殿!」
「于禁殿にとってこの人は遜るべき相手かもしれませんが、私にとっての彼女はただの遠縁の馬鹿娘なんです! どうしてくれるのですか、殿が傷ついてしまった! あなたのせいで!」
「やめて陸遜殿、なんでそんなこと言うの!」
殿が大切だからに決まっているでしょう! どちらか選べと言われたら、私は迷わず殿を選びます。私の無力な手では2人の命は守れない!」



 ひたすら黙って言葉の痛撃を受けていた女性が、おもむろに陸遜の震える左手に触れる。
貸していただけますねと返事を聞く前に双剣の片割れをもぎ取り、矢から守る盾と化した馬車へと向ける。
虚空に向かって一薙ぎした直後火を噴いた馬車に、がぎゃあと悲鳴を上げる。
やはり敵対するしかないのか。これほど悲しい再会があっていいはずがない。
于禁は武器を構えると女性の横に立った。
見向きもされない。
次に何が来るかわかっているかのように炎の向こうを見据えている彼女の横顔が誰かに重なる。




「これは何の騒ぎかと聞いている、仲達」



 聞き覚えのある冷ややかな声と共に眼前が真っ白になり、思考が中断される。
燃え盛っていたの炎が消え、足元には氷の矢が突き刺さっている。
一歩でも動いていれば貫通していたかもしれない。
もうやだぁと背後のが泣き声を上げる。
零れた涙が瞬時に凍りついているとは、知らない方がきっとにとっては幸せだ。



「于禁の出迎えにしては随分と剣呑だが、お前の趣味か?」
「于禁殿の帰還を狙い不逞の輩も侵入を図ったため、迎撃した次第です」
「あれが? 私にはそうは見えんが」
「・・・陛下におかれましてはご健勝のこと、何よりお慶び申し上げます・・・」



 ああ、これが本場のお嬢様というものか。
なるほど真似できない、したくもない。
時の権力者、しかも敵の親玉に向かって怖がることもなく堂々としているなんて友人はどこかおかしい。
ただの形式的な挨拶でもよほど響いたのか、あっという間に兵が退いていく。
何が起こったのか理解ができずただただ怯えていると、陸遜がぎゅうと肩を抱き寄せる。
あたたかい。
今ほど彼を頼もしく思ったことはない。



「陸遜殿、あの・・・」
「大丈夫です。大丈夫、大丈夫のはずです・・・」
「なにそれ・・・」
「于禁らをよく無事に送り届けてくれた。まずは長旅の疲れを存分に癒すといい」
「・・・陸遜殿、入城されますか」
殿の治療だけでも」
「かしこまりました。・・・陛下のご厚情に感謝申し上げます。于禁殿、大儀でした」



 新たに駆けつけた害意のない兵たちが陸遜たちを取り囲む。
安心していいのか警戒していいのかわからず陸遜にしがみつくと、とんとんと背中を優しく撫でられる。
本当に安心していいのだろうか。
実はこれも罠で、バラバラに引き離した後でまた殴られたりするのではないだろうか。
殴られたところで何も出やしないのに酷いことをする、曹魏は怖い。
曹丕の冷め切った目も怖い。
だが、彼が来る前に兵の指揮を執っていた男の方がもっと怖い。
あれは人を人として見ていなかった。



殿」


 次々に出入りする兵たちを所在なさげに眺めていた友人が、申し訳なさそうな表情を浮かべ歩み寄る。
とても顔色が悪い。
妙な術を使って馬車を火だるまにしたりしたから、疲れてしまっているのではないだろうか。
曹丕も真意はともかく疲れを癒せと言っていたし、友人は時間が許す限り静養すべきだと思う。
無茶をする人だ、凌統が頭を抱えているのもわかる。
陸遜の言葉を借りるわけではないが、向こう見ずの馬鹿だ。
だが彼女の捨て身で命を救われたこちらはもっと情けない。



「このたびはご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
「いっ、いえ、私こそあっけなく連れ去られて、ここまで追いかけさせてごめんなさい・・・。于禁殿のお世話も任せてしまって・・・」
殿がご無事ならばそれで良いのです。ご安心下さい、何があろうと陸遜殿と殿は孫呉へお返しいたしますゆえ」
「ありがとう・・・。・・・えっ、あの」



 あなたは一緒じゃないの? 一緒に帰ってくれないの?
素朴な問いかけは発せられることなく、は許昌城内へ連れて行かれた。












































 先程まで殺されかけていたとは思えない厚待遇だ。
豪華な建物へ連れて行かれ戸惑っている間に身ぐるみ剥がされ、体を清められた。
やたらとひりつく膏薬を塗られ傷の処置をされ、触ったこともない上品な衣も着せられた。
城外と城内で全く違う。
しばらくお待ち下さいと見たこともない黒々とした粒の塊を机上に残し去っていった女官たちを見送ったは、ようやくええーと叫んだ。
女官の質から何から違う。
この黒い粒は何だ、飾りか?
茶は茶だとわかるが、同盟国とはいえ近く確実に敵国となる地で供されるものを気軽に口に入れるわけにはいかない。
一応そのくらいの分別と教養はあるのだ。
朱家でされ尽くした嫌がらせの経験がここにきて役に立つとは思わなかった。
それにしても、待てと言われたが何を待っているのかわからない。
陸遜は無事だろうか。
彼はあれでも代えの利かない孫呉の都督様だから、至れり尽くせりの歓待はされていないかもしれない。
牢獄にぶち込まれているかもしれないし、ひょっとしたら違う意味で骨抜きにさせるべく歓待されて曹魏に降らないかと迫られているかもしれない。
もしそうならば、私は人質ということか。
それは駄目だ、これ以上迷惑はかけたくないし足手まといにもなりたくない。
逃げなくちゃ。
は勢い良く立ち上がると、扉へと向かった。
宮殿のつくりは建業と大して変わらないだろう、ここが厳密にどこなのかはわからないが。
回廊へ一歩踏み出そうと戸を開けたは、ほぼ同時に開かれぬっと伸びてきた屈強な腕に両肩を掴まれぎゃあと叫んだ。
知らない男が鬼のような形相で見下ろしている。
陸遜よりも遥かに大きく、伸ばされた腕も太い。
今日だけでいったい何度泣き叫べばいいのだ、もう喉はガラガラだ。
それに今は恐怖で叫んだきり体が動かない。
全身が雷に撃たれたように痺れている。




「・・・公主が戻られたと聞いたが」
「・・・え・・・?」
「怖がらせてすまなかった、人違いだ」



 体は解放されたが、掴まれていた肩はとても痛い。
跡が残るのではないかと心配になるほどに驚異的な膂力だった。
やはり恐ろしい国だ、陸遜には悪いが逃げ出すなんてできそうにない。
すっかり腰が抜け部屋の前で座り込んでしまったは、遠方にちらと見えた人影にひいと声を上げた。
また新手だ、今度は誰だ。
首だけ巡らすと、見覚えのある男だとわかる。
あれは確か後から城壁に現れ偉そうに指示を出していた曹丕、えっ曹丕!?
国で一番偉い奴がしがない女官に何の用だ。
無礼を働けばこの場で殺されるかもしれない。
どうにか立ち上がろうと使い物にならない腰に活を入れるが、曹丕にとってこちらの状態などどうでもいいらしい。
話があるとだけ告げさっさと部屋に入る彼は、紛れもなく国の頂点に立つ男だ。
孫権とはかなり毛色は違うようだが。



「何をしている、時間が惜しい」
「すみません・・・。先程突然すごく威圧感のある将軍・・・でしょうか、公主がどうとか言ってきたのにびっくりして腰が抜けました・・・」
「張遼か、あれも懲りん男よ」
「ちょ・・・あ、あれが張遼・・・! 遼来遼来の、あの・・・!」
「貴様の国ではそう呼ばれているようだな。・・・さて、貴様は何者だ」



 立ち上がるのを待つつもりはないらしい。
ひとりでさっさと黒い粒を口に入れながら話し始めた曹丕を、は恐る恐る見上げた。
あれは食べ物だったのか、やたらと食べているが皇帝の口に合うほどの美味なのだろうか。
ちょっと食べてみたくなってきた。
はよろよろと立ち上がると、部屋をぐるりと見回した。
どの位置から話すのが正しいのかわからない。
早く座れと自らの向かいの席を顎でしゃくった曹丕に促されるまま、はちょこんと腰を下ろした。
自国の主ともこの距離で話したことはない。
ここは練師がいる場所だ。



「公主を騙ったというのは事実か?」
「まさか、そんなわけ! ・・・というか今でもどうして私がここまで連れて来られたのかわからなくて・・・。建業では于禁殿付きの女官としてのお役目を仰せつかっておりました、と申します」
「解せんな。于禁付きがなぜ于禁より先んじてここまで来た」
「それは私も知りたいんですけど・・・。于禁殿のお世話をしていたのは本当です、于禁殿に確かめて下さっても構いません。邸に潜んでいた何者かに襲われ、はるばる許昌まで来たくもないのに連れて来られました」
「誰の手先だ」
「知るわけないです、私は武器も握ったことがないただのしがない女官なんですよ? ・・・そういえば、しきりに公主がどうとかと言っていたので、ひょっとしたら私と間違えちゃったのかも・・・。私も偉ぶろうとして張り切っちゃったし・・・」
「公主が何か、貴様は知っているのか」




 意外と人の話を聞くつもりのある皇帝のようだ。
ある時の陸遜よりも遥かに聞き分けも良い。
興味本位で黒い粒をつまみ食いしても怒らない。
見た目はとても冷ややかだが、きちんとした人だ。
こちらが嘘をついているとは思わないのだろうか。
話の本質もわからないので隠すべきものもわからず、ありのままに話している点を好意的に受け取ったのかもしれない。
素直に育てられて良かった。
は曹丕の問いかけに、いいえときっぱりと答えた。



「孫呉にそう呼ばれるべき人はいません」
「・・・そうか」
「・・・あの、友人はどこでしょうか。陸遜殿も。于禁殿のお傍に仕える役目も終わったのですぐにでも孫呉に帰りたいのですが」
「呼んだ覚えもない、今すぐ消え失せろ」
「良かった・・・。陸遜殿も無事ですか? 私を庇っていたのでたぶん私よりもよっぽど怪我してるはず・・・」
「知らん、興味もない。とやら、大儀であった。褒美を取らせる、望みがあれば言え」
「え、褒美なんてそんな・・・あっ」



 目の前の皇帝の豪奢な衣をまじまじと見つめる。
実物を見たことがないからわからないままだが、あの鳥こそまさに鳳凰なのではないだろうか。
街中を探し、こっそり練師に尋ねても得られなかった回答が目の前にある。
欲しい。
魏帝から下賜されたものを孫呉に持ち帰ることの外交的諸問題はさておいても、今後の内職の幅を広げるためにもぜひ欲しい。
それ、とは呟いた。
怪訝な表情を浮かべる曹丕の外套を指さし、鳳凰とまた呟く。



「その鳥、鳳凰でしょうか? 友人がずっとその意匠の服を欲しがっていて、刺繍のお手本に欲しいかも・・・」
「その友は・・・、いや、良い。考えておく」



 なんでも言えというありがたくも太っ腹な申し出は嘘だったのだろうか。
さすがに不敬が過ぎたのか、曹丕が立ち上がるなり部屋を出て行ってしまう。
例外があったのならば初めに言ってほしかった。
うっかり欲しがってはならないものを言って首を刎ねられたらどうするのだ。
曹魏はどうもしないのだから困るのはこちらだけだ。
は再び無人となった部屋を当てもなくうろついた。
曹丕は陸遜のことを何も教えてくれなかった。
興味がない、なるほど大正解の回答だ。
この身もほんの少し前までは同じ言葉を即答していたし、案外曹丕とは気が合うのかもしれない。
だとすれば、襲撃者が公主と間違えるのも無理はないということだろうか。
公主が誰だか知らないが、かわいそうな人だ。
彼女に心休まる地があるのか、会ったことはおろか見たこともない名も知らぬ公主とやらが心配になってしまう。
彼女自身がどう思っているかは知る由もないが、孫呉は人々の気性は荒いが気候は穏やかで、慣れれば住みやすい土地だ。
ぜひ楽しんでほしい。
なぜ曹魏の公主が呉にいるのか、そのあたりは知ったところでどうでもいい話だ。
尚香と劉備のように偉い人たちはとかく政略結婚がお好きなのだから。
あの陸遜にだって縁談はごまんと舞い込んできているのだ。
そんな男に一方的に懸想されて居心地がいいはずがない。



「・・・殿、殿!!」


 ぼんやりと外を眺めていると、見慣れた顔が大音声で人の名前を勝手に呼ばわっている。
あの男、ここがどこだかわかってその痴態を晒しているのか。
みっともないし恥ずかしい、周囲の人々が遠巻きにひそひそしているのが見えていないのかもしれない。
はのろのろと立ち上がると、部屋を出て声の主へと歩き始めた。
あんな体たらくだが、ここでは数少ない味方だ。
自分の命を粗末に扱いこんな所までやってきてしまった途方もない馬鹿だから、往来で叫んでしまうのだ。
震えながらも抱き寄せてくれた温もりは、生涯忘れることはないと少なくとも今は思っている。
ここまで命を懸けなければ気付けないとはなんとも空しい話だ。
建業に帰ったらきちんと礼を言おう。
ひとつくらいは彼の願いを聞いてやってもいい。



「陸遜殿」
「ああ、殿! 良かった、ご無事なのですね!!」
「おかげさまで。陸遜殿も思ったよりもお元気そうで」
「当然です、こんなところで負けていられませんからね! おひとりでずっと寂しかったでしょう、妙なことはされませんでしたか?」
「今こうして陸遜殿にべたべた触られているのが一番妙なことなのですが」




 きちんと洗った綺麗な手なのだろうか。
せっかく洒落た衣を用意してもらった気分も良いのだから、身綺麗なまま建業へ戻りたかったのだが。
は険しい表情でかすり傷の跡を丹念に検めている陸遜の手を恥ずかしさから叩き落すと、辺りを見回した。
もうひとりいるはずだが、どこにも見当たらない。
陸遜の遠縁の娘と聞いていたのでてっきり彼と共にいるとばかり思っていたのだが、当てが外れた。
陸遜よりも于禁よりも守ってくれた友人はどこへ行ったのだ。
は陸遜にぐいと詰め寄った。



「このままじゃ建業に帰れない」
殿、彼女は・・・」
「このままじゃ帰っても凌統様に殴り殺されますよ。遠縁の娘って言ってたじゃないですか、連れ戻して下さい」
「その手は使えません」
「どうして」
「私などよりももっと近い縁者がここにはごまんといるからです」



 それで返してもらえるのならば、とっくに帰路に就けていた。
は何も知らない。
知らない、知ろうとも考えていないであろう彼女に告げるべき話はない。
何もしなかったわけではないのだ。
数少ない手のうちからやれることはやり尽くして、そして追い返されたのだ。
盗人猛々しいと罵倒された。
どの面を下げて言っていると痛罵された。
正論だ、返す言葉が見つかるはずもない。
自分でも、言葉にしておきながら何と空しい抵抗をしているのだろうとかつてない敗北感を味わっていた。
彼女は今はおそらく宮中の奥深く、「本物の縁者」しか立ち入ることのできない場所にいるはずだ。
聞きたいのは本人の意思だと粘り強く交渉をしたつもりだったが、はなから無理筋だったのだ。
どう考えても分が悪すぎる、夷陵で受けた傷跡もいけなかった。
危うく死因が笛による撲殺死になるところだったのを必死に留めてくれたのは、他でもない遠縁の馬鹿娘だった。



「そ、それでも都督ですか! もっと孫呉の民のこと思ってあげてよ! ・・・私、曹丕に会ってきます」
「無謀です。殿まで帰れなくなったらどうするのですか! 孫呉の民のことを思うなら、私は殿の無事を他の誰よりも大切に思っています。参内は許せません」
「私は軍師じゃないし、将軍でもないですけど! 私にだって使える手はあるんです。だから陸遜殿は私が捕まったらまた助けに来て下さい、私のこと好きならできますよね、待ってますから!」



 迷っている時間はない。
は陸遜の制止の声を振り切ると、宮殿へと駆けだした。







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